市場化テスト

 小泉内閣の「民間にできることは民間に」という構造改革のなかで打ち出した施策の1つとして平成18(2006)年に導入された「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」に基づく制度であり、官と民が特定業務に関して入札に参加する官民競争入札制度を指す。具体的な業務は、事務または事業の内容および性質に照らして、必ずしも国の行政機関等が自ら実施する必要がない業務であるか否か、公共サービスの質の維持向上および経費の削減を図るうえで、実施主体の創意と工夫を適切に反映させる必要性が高い業務であるか否か、などの項目に沿って決定される。また、国の場合は、当該事業について、対象公共サービスの選定と評価などを第三者委員会である「官民競争入札等監理委員会」が国民の意見を聞きながら監視することとしている。地方自治体の業務については、法律上規定はあるが地方自治の本旨から、当該自治体の判断にゆだねられることとなる。イギリスでは、サッチャー政権時の1980年に強制競争入札(CCT: Compulsory Competitive Tendering)が導入され、政府が法により特定したサービスに関しては、強制的に官民競争入札を義務づけるという徹底した方法をとり、その範囲は、当時の保守党政権下で順次拡大された。CCTは、サービスの価格は安価になったものの、その質は相対的に低下したとの論証もみられ、保守党を継いだ労働党のブレア政権で中止され、サービスの価格とともに質を重視するベストバリュー(best value)政策がとられた。また、民間企業が落札した場合、労働者保護規定で、事業譲渡時に適用されるTUPE(Transfer of Undertakings Protectionof Employment regulations;企業譲渡[雇用保護]規則)が公務労働者にも適用される。これは、企業間で事業譲渡等が行われた場合、新事業主が従業員の賃金水準を(原則として)従前と同様の水準に維持しなくてはならないとする規則である。
(金川幸司)