資産総額の変更登記

 組合等登記令(昭和39年政令第29号)に定められている登記事項である。同政令の別表によりこの規定を受ける法人は明記されている。医療法人、学校法人、更生保護法人、社会福祉法人などである。資産の「総額」とは書かれているが、実際は資産から負債を控除した正味財産(純資産)の金額を登記する。株式会社における資本金の登記と同じ効果を目的としたもので、取引の相手方の保護を図るとともに、取引が迅速に行われるための公示機能があるといわれている。正味財産(純資産)は事業を継続しているかぎり通常毎事業年度ごとに変動するから、資産総額の変更登記は毎事業年度ごとに行わなければならない。観念上正味財産は常に変化しているともいえるが、現実的には貸借対照表や財産目録の作成時期に登記するしか方法がないためである。ただし、組合等登記令で定められている登記事項の他のものは、変更が生じたときは2週間以内に行わなければならないとされているが、資産総額の変更登記は事業年度終了後3か月以内で足りる。登記方法に関しては、登記申請書とともに財産目録の写しに原本証明を付けて提出する。
 なお正味財産であるから現実にはマイナスの場合もありうる。その場合は金額のマイナス表示はできないから、「資産の総額金0円(債務超過額金○○円)」と書くことになっている。資産総額の変更登記も登記事項には変わりはないので、懈怠すると過料が課せられる。特定非営利活動法人も従前はこの組合等登記令により資産総額の変更登記を行わなければならなかったが、平成28(2016)年の特活法改正により、貸借対照表の公告を行うことによってこの資産総額の変更登記は不要となった。貸借対照表の公告は、官報や日刊紙に掲載する方法のほか、法人のホームページや内閣府NPO法人ポータルサイトを利用する電子公告や、主たる事務所の掲示板に掲示する方法も認められている。平成20(2008)年の公益法人制度改革以降の一般社団・財団法人、公益社団・財団法人などの公益法人には、この資産総額の変更登記の制度はない。一般社団・財団法人や公益社団・財団法人は、一般法人法において登記事項が定められており、また貸借対照表の公告などの情報公開制度も定められているので、併せて登記において資産総額を公示する意味がないためである。
(岩永清滋)