自己取引

 法人の役員や職務執行者が、自ら当事者として、または他者の代理人として、法人との間でする取引である。英語では、self-dealingと呼ばれ、conflict of interests(利益相反取引)の典型例として扱われている。自己取引については、一般法人法84では、競業および利益相反取引の制限についてとして、以下の3つの場合には社員総会において、その取引につき重要な事実を開示し、その承認を受けなければならない、と定めている。①理事が自己または第三者のために一般社団法人の事業の部類に属する取引をしようとするとき。②理事が自己または第三者のために一般社団法人と取引をしようとするとき。③一般社団法人が理事の債務を保証することその他理事以外の者との間において一般社団法人と当該理事との利益が相反する取引をしようとするとき。すなわち、法人の理事は競業取引規制および利益相反取引規制に服する。理事は、法人に対して忠実義務を負い(一般法人法83、197)、その地位および常用等を利用して、法人の利益を犠牲にして自己にとって経済的に有利な取引をする可能性があるためである。
(早坂 毅)