資源依存理論

 環境状況と展開される使命、戦略、統治、組織特性との間の相互関係を分析するための重要な視角が組織論の分野で提示されている。このような分析視角の1つが資源依存理論である。資源依存理論は、Thompson, J.D.(トンプソン)などによって端緒が与えられ、Pfeffer, J. and Salancik, G.R.(フェファーとサランシク)によって集大成された。資源依存理論によれば、いかなる組織も自らの事業領域と環境状況を定義するとともに管理しなければならない。環境状況のうちの組織間環境と市場環境は、具体的にはさまざまな資源を所有しコントロールしている他組織のことである。たとえば、非営利組織の組織間環境としては、サービスの提供組織、政府・地方自治体の規制当局、国際組織、徴税機関、理事会、ボランティア、アルバイト、中間支援組織、プロボノ、寄付者、助成団体、金融機関などがあげられる。他方、非営利組織の市場環境としては、サービスの受益者、顧客、類似のサービスを提供する他組織などがあげられる。
 これら組織間環境と市場環境が課す資源の依存性を管理することは、組織のもっとも重要な課題である。組織は他の組織や個人との間でさまざまな資源の交換を行いながら、当該組織に対し影響を及ぼすとともに当該組織をもっとも必要とする他組織や個人を満足させる必要がある。この資源の依存性に影響を及ぼす構造の次元として、①集中化(特定の環境のもとでのパワーや権限の分散度)、②豊富さ(重要な資源の希少性やその他の資源の利用可能性)、③組織連結度(組織間の連結の数やパターン)の3次元がある。集中が低く、重要な資源が不足し、組織連結度が高い場合、他組織に対する依存性が高くなる。他組織への依存性が高く、他組織との間にコンフリクトが生じると、組織は不確実性あるいは予測不可能性に直面することになる。組織はこれら依存性と不確実性を削減もしくは回避するために、さまざまな組織間関係を展開する。このような組織間関係のマネジメントの方法として、①依存性の吸収・回避を目指す自律化戦略(吸収合併)、②依存性を認め他組織と良好な関係性を形成する協調戦略(人材導入、理事会に他組織の理事会の役員を含む兼任理事制)、③依存性を間接的に操作する政治戦略(ロビー活動、有利な税制・政府規制の獲得)の3つがある。
 この資源依存理論は、なぜ組織間関係が形成・展開されるのか、なぜ組織間にパワー関係が発生するのかを明らかにするとともに、この組織間関係のマネジメントを課題としている。
(小島廣光)