資金調達

 事業に必要な資金を当該組織の外部または内部から新たに調達することを指す。事業体からみて、事業開始の時点では資金調達はすべて外部からの調達だが、事業開始後からは事業体自らが事業を通じてえた資金(利益、減価償却費、引当金)が加わる。このように捉えると、資金調達ルートは外部資金と、事業の活動の過程で事業体自らが生み出す内部資金に分けられる。外部資金は、他人資本(借入金、債券等)と、自己資本(株式、補助金、寄付金、出資金等)に分類される。他人資本は、文字どおり他人の資本なので、返済義務があり、当然に金利といった資金コストがかかる。これに対して外部資金としての自己資本は、事業体所有の資金となるため、返済義務はない。ただし、利益が出た場合、株式の場合等は拠出者に対して配当等の形で報酬を求められるので、この分資金コストがかかる。また、外部資金として調達した場合は、他人資本であれ自己資本であれ、資金の出し手から経営干渉を受ける可能性がある。これに対して内部資金は、利益、減価償却費、引当金といった、事業活動を通じて自ら生み出した資金なので、自己金融と呼ばれ、当然に返済義務や資金コストもなく、外部からの干渉を受けることもない。上記のうち、他人資本による外部からの調達をデットファイナンス、自己資本による外部からの調達のなかでも特に株式による調達をエクイティファイナンスと呼ぶ。これらデットファイナンスやエクイティファイナンスは、事業体の信用力に基づいた調達であるのに対し、近年は必ずしも事業体の信用力に基づかない新しい手法による資金調達が増加している。その代表例がアセットファイナンスやクラウドファンディングである。アセットファイナンスとは、不動産証券化や債権証券化に代表されるように、資産が生み出すキャッシュ・フローを裏付けにした資金調達である。たとえば、病院はその土地・建物を特定目的会社(SPC:SpecialPurpose Company)に売却して当該SPCに家賃を払い、投資家はこの家賃収入から利子や元本等をえる。クラウドファンディングとは、文字どおりcrowd(一般大衆)からのfunding(資金調達)である。その調達方法は、サービスや物品の購入を通じた調達の他、寄付型、融資型、株式型等、従来の手法と基本は同じであるが、事業に対する共感を感じた一般の人々からインターネットを通じ簡便に広く浅く資金を集めるところに特徴がある。 非営利組織における資金調達では配当が禁止されているので、株式による調達ができない。また、実質的な配当に該当する可能性がある資金調達には非営利性に疑義が生じ注意が必要である。近年、非営利組織における資金調達が重視されているが、それは資金調達が事業の継続性の上で重要であるのはもちろんのこと、共感を軸に非営利組織と社会を結び、社会をより良くするための仲間・支援者を増やすためでもある。事業への理解・共感をえるには、なぜ当該事業を行う必要があるのか、非営利組織の目的やビジョン、ミッション等を明らかにした趣意書の作成や公開が肝要である。また、ダイレクトメールファンドレイジング(郵送による寄付依頼)等は、電子メールの時代だからこそ、あなたへ特別にお願いするという訴求力があると考えられる。
(松原由美)