事業未精算債権・債務(農業協同組合)

 事業上生じる立替金、前受金などの一時的な経過勘定をいう。経済受託債権・経済受託債務とも呼ばれる。事業未精算債権は受託販売事業に係る販売委託者に対する立替金および仮渡金その他の事業上の未精算債権と規定され、破産債権、再生債権、更生債権その他これらに準ずる債権で1年内に弁済を受けることができないことが明らかなものは、その範囲から除かれる(農協法施行規則95Ⅲ)。一方、事業未精算債務とは、受託販売事業に係る販売委託者に対する未精算の販売代金その他の事業上の未精算債務をいう。事業未精算債務は受託販売事業に係る販売委託者に対する未精算の販売代金その他の事業上の未精算債務と規定され(同法施行規則95Ⅲ)、たとえば、受託販売の農産物の販売代金として受け取った金額のうち、委託者への支払いが行われていない金額が計上される。 農業協同組合(JA)が行うことのできる事業の1つに経済事業があるが(農協法10)、購買事業、販売事業が主要な事業であり、他に加工事業、利用事業、宅地等供給事業および指導事業がある。JAの農産物販売には受託と買取があるが、受託販売とは生産物の販売をJAが受託した取引であり、生産物の在庫責任は生産者にあり、JAはあくまでも生産物を預かっているだけである。そして、JAは最終的に販売手数料のみ収益計上されることになる。これら経済事業から生じる債権・債務のうち、経済事業未収金・経済事業未払金は、一般会社の売掛金・買掛金に相当する。受託販売の農産物について組合員に販売代金の仮渡を50万円支払った場合、以下の仕訳となる。
(借)事業未精算債権 50
  (貸)貯金      50
 受託販売については、債権債務の過大表示を避けるため、純額表示が望ましいとする意見と管理の観点から総額表示が望ましいとの意見がある。受託販売を貸借対照表上、両建て計上する方法と同一取引ごとに債権債務を相殺し純額計上する方法、いずれも会計上認められている。
(白土英成)