事業報告書

 その法人の事業実施状況について、事業に関する報告を行う書類である。事業に関する報告書には、言語により記述する事業報告書の部分と、会計情報により報告する計算書類等がある。これらの目的は、受託責任の解除、パブリックリレーションズの促進などがあげられる。通常、事業報告書は計算書類等と同時に作成し、保存する。社福法では事業運営の透明性の向上のため、社会福祉法人は、毎会計年度終了後2月以内に事業報告書を作成し、備置き・閲覧書類が要請されている。また、社会福祉法人の事業執行状況等(現況報告書、計算書類および社会福祉充実計画)については、令和2(2020)年1月現在、独立行政法人福祉医療機構(WAM:Welfare and MedicalService Agency)の社会福祉法人の財務情報等電子開示システムにより公開されている。私学法でも、学校法人は、毎会計年度終了後2月以内に、事業報告書を作成しなければならないこと、および学校法人は、事業報告書ほかの書類および監事の作成する監査報告書(財産目録等)を各事務所に備え置き、在学者その他の利害関係人から請求があった場合には、正当な理由がある場合を除いて、これを閲覧に供しなければならない、としている。しかし、私学法の一部を改正する法律等の施行に伴う財務情報の公開等について(文部科学省高等教育局私学部長通知、平成16[2004]年7月23日)では、「新たに事業報告書の作成を義務付けたのは、財務書類だけでは、専門家以外の者に容易に理解できない場合が多いと考えられることから、財務書類の背景となる学校法人の事業方針やその内容を分かりやすく説明し、理解を得るためであること」としているため、私立学校における事業報告書の役割は、財務情報を補うものとの位置づけとなっている。
 一般社団法人(公益社団法人を含む)は、一般法人法、公益認定法により、各事業年度に係る計算書類および事業報告を作成し、その主たる事務所に定時社員総会の日の1週間前の日から5年間、従たる事務所にはその写しを3年間備え置かなければならない。一般財団法人(公益財団法人を含む)は、一般法人法、公益認定法施行令により、計算書類および事業報告を作成し、その主たる事務所には、定時評議員会の日の2週間前の日から5年間、従たる事務所にはその写しを3年間備え置かなければならない。特定非営利活動法人は、毎事業年度はじめの3月以内に都道府県または指定都市の条例で定めるところにより、前事業年度の事業報告書を作成し、これらをその作成の日から起算して5年が経過した日を含む事業年度の末日までの間、その事務所に備え置かなければならない。宗教法人法では、宗教法人が毎年作成すべき書類およびその事務所に備え置くべき書類のなかに事業報告書は含まれていない。
(早坂 毅)