事業型NPO

 総収入に占める事業収入の割合が高いNPOを指す。NPOには利潤の非分配制約が課されるが、NPOが収益事業を実施することや利益をえることを制限するものではなく、事業によってえられた利潤を組織内外の利害関係者に分配せず、今後の社会的な活動に用いることが求められる点で財政上の特徴を有する。NPOのおもな財源には、自主事業による収入や行政からの事業受託による委託金などの事業収入、会費、企業や個人から寄せられる寄付金、政府補助金などの公的補助や民間助成団体からの助成金などがある。NPOはそれぞれの活動目的や活動の規模に応じて、組織が置かれた経営環境のなかで活動に必要な資金を調達する。NPOには多様な種別があり、収入構造はそれぞれの分野や法人格によって異なる。平成29(2017)年度の内閣府調査では、NPO法人の年間総収入のうち、77%が事業収入、10.9%が補助金・助成金収入、8%が寄付金収入、2.8%が会費収入、その他の収入が1.3%であり、事業収入が大部分を占める。なお、寄付金に対する税制優遇が適用される認定NPO法人や特例認定NPO法人でも、事業収入が総収入の67.9%を占める一方、寄付金収入は15.9%程度にとどまる。認定を受けていない法人では、総収入の83.8%を事業収入が占める。NPOの資金調達では、会費や寄付金による収入が期待できない場合、財務リスクに備えて、自主事業収入や行政からの事業委託など、安定的に収入がえられ、資金使途の制限が低い財源が選択される傾向がある。たとえば、寄付は経済状況によって変動するため、収入額を予測することが難しい。また、補助金や助成金は大部分が公募型の競争資金であり、収入の不確実性が高い。また、人件費や管理費など使途が制限される場合が多く、事業終了後には事業や会計に関する報告書の提出が求められる。会費は会員制度を設置することで定期的な収入が期待されるが、会員管理や総会での説明責任など事務的負担が付随する。NPO法人の総収入における財源比率を時系列で観測しても、総収入に占める事業収入の割合は年々上昇傾向にある。
(中嶋貴子)