残余財産

 法人および組合など組織体における清算手続きで、債権者に弁済したあとに残った金銭上の価格ある財産をいう。営利法人である株式会社の株主は、企業に対して株主としての権利をもつことができる。その1つが、残余財産分配請求権である。企業が解散する際に、負債を返済し、なお財産が余る場合、株主はそのもち株数に応じて残った財産の分配を受けることができるという権利を保有している。一方、非営利法人は、株式会社における株主に相当する持分権者は存在しない。また、解散時には原則としての残余財産を社員や役員等に分配することは認められておらず、当該権利を与える旨の規定も認められていない。残余財産の帰属先については公益法人、一般法人、特定非営利活動法人といった法人形態により相違がある。公益法人は、清算をする場合において残余財産を類似の事業を目的とする他の公益法人もしくはつぎの法人(①学校法人、②社会福祉法人、③更生保護法人、④独立行政法人、⑤国立大学法人、⑥大学共同利用機関法人、⑦地方独立行政法人、⑧その他①〜⑦までに掲げる法人に準ずるものとして政令で定める法人)、または、国もしくは地方公共団体に帰属させる旨を定款で定めなければならない(公益認定法5⑱)とされている。なお、解散時には、残余財産の引渡しの見込みを行政庁に届け出なければならない(公益認定法26Ⅱ)。一般法人では、定款に社員に残余財産の分配を受ける権利を与える旨の規定は効力を生じない(一般法人法11Ⅱ、153Ⅲ②)とされる。残余財産の帰属は、定款の定めによる(一般法人法239)が、それで帰属が決まらないときは、清算法人の社員総会または評議員会の決議によって定まり(一般法人法239Ⅱ)、それで帰属が決まらない残余財産は、国庫に帰属する(一般法人法239Ⅲ)というように社員総会または評議員会の決議による分配も認められている。特定非営利活動法人は、残余財産の帰属すべき者に関する規定を設ける場合には、その者は、特定非営利活動法人その他つぎに掲げる者(①国または地方公共団体、②公益社団法人または公益財団法人、③学校法人、④社会福祉法人、⑤更生保護法人)のうちから選定されるようにしなければならない(特活法11Ⅲ)。また、定款に残余財産の帰属すべき者に関する規定がないときは、清算人は所轄庁の認証をえて、その財産を国または地方公共団体に譲渡することができる(特活法32Ⅱ)とされる。
(生島和樹)