参入障壁

 他の組織が市場に入るのを阻止し、その市場で経済的に生存できる形で存在するのを阻止する現象である。非営利組織がある業界に参入したいと思っても、その多くが参入できない場合や、あるいは参入できたとしてもすでにその業界に存在している組織と同等の条件で競争できる組織の数がかぎられている場合には、高い参入障壁が存在しているといえる。もし参入障壁が高い場合には、その業界への新規参入の脅威は小さくなり、その業界の競争は穏やかになる。参入障壁という概念は、営利セクターで生まれたものであるが、非営利の領域にも援用できる。非営利の領域での参入障壁を高める要因はおもに5つある。第1に、規模の経済である。規模の経済は、組織の活動規模が拡大するにつれて専門化された人材や設備を用いるようになるなどして、単位コストが低下する現象である。規模の経済が大きい場合、新規参入に必要な投資が大きくなり、参入のリスクが生じる。第2に、評判である。資金調達が重要な市場においては、その非営利組織の評判やブランドネームが高い価値をもつ。十分な評判をえていない非営利組織は、資金調達などの面で不利になるため、新規参入を避ける傾向にある。第3に、流通チャネルへのアクセスである。寄付や助成金をえたり、商品やサービスを提供したりするための「つて」がなければ、資金調達は困難になるため、そのような組織は新規参入を避ける可能性がある。第4に、政府の規制である。政府や地方自治体の法的制度によって、その業界への参入に許認可が必要な場合がある。第5に、特殊な資産への投資の必要性である。他の製品やサービスに転用できない資産を多く所有する必要がある場合には、事業失敗時のリスクが大きくなる。そのため、参入が避けられる可能性がある。
(深山誠也)