産後ケア

 出産直後の産褥期(産後1か月、長くて2か月程度)を中心とした母子に対して行う包括的な支援をいう。出産直後は母体は疲労し、ホルモンバランスが大きく乱れ、精神的に不安定な状態となっているため、栄養のある食事と十分な睡眠・休息をスタッフが育児補助も含めてサポートすることによって、母体を回復させ、心の状態を平穏に保つことが必要となる。母体回復と母乳のあげ方などの新生児への接し方をサポートし、心身ともに健全な状態で育児を行うという、出産から育児までをシームレスに繋ぐ重要な産後の過程である。産後ケアの目的は、産後の肥立ちを良くすることで、産後うつを予防し、母体の心身の健全性が保たれ新生児と良好な関係性を築き、児童虐待を防止することにある。産後ケアは、自治体の施設、助産院、病院、民間の施設などで行われており、施設により異なるが、産後ケア施設にはアロママッサージ、子育て相談室、おっぱいマッサージ、お母さん同士の交流会など、母体のケアと育児不安を解消するための相談ができる場を設けている。利用形態としては、施設への宿泊、施設の日帰りでの利用、宿泊や日帰りでの施設が利用できない家庭は自宅への訪問という形態がある。利用料金は自治体によって異なるが、自治体在住の住民であれば実質的な負担額は1割や3割となり、利用者の実質負担額は宿泊で1泊3,000円から1万円程度となっている。宿泊を利用したいときに満室で利用できない、利用料が高額であるため利用を控えてしまう、自治体の新生児訪問により利用が必要と判断した母子が利用を拒否する、などの課題もある。地域差も存在し、出産後実家に帰ることができない都心部に産後ケア施設は多く存在し、地方の自治体では施設数を少なくし需要と供給のバランスを考慮している。産後ケアの重要性や産後ケア施設および実施内容が日本では広く浸透していないという課題もある。
(榮田悟志)