財務的生存力

financial viability
 Anthony, R.N.( アンソニー)が『非営利組織の財務会計:概念問題の予備的研究』(1978年)において、非営利組織に対する主たる情報ニーズをあらわす用語として概念化したものであり、「非営利組織の存在目的であるサービスを提供し続ける財務的な能力」をいう。アンソニーによると、非営利組織に対する情報ニーズは、財務的生存力のほか、「資金使途指定への準拠性」(資金が使途指定どおりに利用されているかを示す情報)、「経営管理者の業務運営の状況」(資源提供者に対する受託責任に資する情報)および「提供したサービスのコスト」(サービスの提供に費やした金額に関する情報)の4つに整理される。さらに財務的生存力の評価がストックとフローの両面から示される。ストック情報に関する指標には「支払能力」、「流動性」、「資源移動可能性」および「資産と負債の関係」(純資産)がある。資源移動可能性とは、非営利組織が資源を多用途に利用する自由をあらわす。使途制約のある資源の割合が高ければ、方針転換や新たなニーズへの対応が困難である。ゆえに、非拘束資源と拘束資源の割合をもって財務的生存力が評価できる。特に純資産を拘束資金と非拘束資金に区分すると、後者が財務的生存力の源泉をあらわす。なお、資源移動可能性は、財務会計基準審議会(米)基準書第117号(1993年)の財務的弾力性(financialflexibility)概念(純資産区分の根拠)に通底する。他方、フロー情報に関する指標には「流入資源の性質」および「一期間の資源の流入と流出の関係」(活動計算書のボトム・ライン)がある。流入資源をソフト・マネー(例:寄付金収入)とハード・マネー(例:販売収益)に区別し、後者の割合が高ければ財務基盤は強固といえる。また、ボトム・ラインから純資産の維持が把握され、非営利組織の存続が判断できる。なお、同様の記述は財務会計基準審議会(米)概念書第6号(1985年)に見受けられる。
(佐藤 恵)