混合診療

 公的医療保険の対象となる一般保険診療と、対象外となる保険外診療を併用することをいう。日本において、保険の対象となるのは、厚生労働省が認める一般的な診察や検査など(薬や材料も含む)の治療であり、これらを患者が受療した際には、7割は保険から支払われるため、患者が窓口で支払う自己負担額は3割となる(70歳未満の場合)。しかし、がんなどさまざまな理由により、厚生労働省が未承認の治療を受療する場合は、保険の対象外となるため、全額自己負担となる。この場合、日本では一般保険診療と保険外診療の併用は認められていないため、一般的な診察などの診療と未承認のがんの治療などを併用して受けたとき、一般的な診療の部分も含めて保険適用外となる。すなわち、保険適用外の治療を受ける場合は、保険適用の部分も含めて、全額自己負担となる。ただし、厚生労働大臣が保険外併用療養として定める、評価療養と選定療養については保険診療との併用が認められている。評価療養とは、将来的に保険給付の対象とするべきかどうかについて評価を行うものであり、先進医療(厚生労働大臣から承認を受けている高度な医療技術を用いた保険外診療)や医薬品の治験(国に申請するための薬の候補の試験)に関する診療などがあげられる。また、選定療養とは、将来的に保険導入を前提としない、厚生労働大臣が定める療養のことを指し、特別室などの差額ベッド代、歯科の金合金代などがあげられる。現在、日本では混合診療は認められていないものの、さまざまな視点から議論はなされており、認めるべき理由の1つとしては、一般診療と併用しながら、最新の治療を受けたいという患者の自由な選択肢を増やすことがあげられる。また、認めるべきではない理由としては、保険外診療は自由診療となり、医療機関が価格を自由設定できるため高額になりやすく、患者は保険診療ではなく、高額な保険外診療を提供されやすくなってしまうのではないか、という考えがある。
(酒井美和)