コモンズ

commons
 コモンズの概念については論者によりさまざまであるが、一般的なものとして、共有資源を共同管理する仕組みがあげられる。あるいは、コモンズは「共有地」と訳されることもあるとおり、共有資源そのものを示す場合もある。コモンズの概念に光が当てられる契機となったのは、アメリカの生物学者Hardin, G.(ハーディン)が1968年に『サイエンス』(Science)に出した論文「コモンズの悲劇」(The Tragedy of the Commons)で提起した問題であり、以降、「コモンズの悲劇」をめぐって、さまざまな分野で多くの論争が展開されてきた。「コモンズの悲劇」とは、以下のようなものである。複数で共有している牧草地があるとする。牧畜をしている人は、共有牧草地にできるだけ自分の家畜を放牧しようとする。そして、たとえ、これ以上家畜の放牧を増やせば、牧草地の条件が悪くなることが明らかになっても、一人ひとりにとっては、家畜を1頭増やすことによってえられる利益は、家畜を1頭増やすことによって被る牧草地の悪化という損失よりも大きいため、家畜の数を増やそうとする。結果として際限なく家畜を放牧していくうちに牧草地のキャパシティを超えて過密状態になり、牧草地は枯れて消滅してしまうというものである。このように、一人ひとりの個人が自己の効用を最大化しようとして合理的に行動を行った結果、過剰利用により共有地は枯渇し、全体として不合理で悲劇的な結果を生み出す。これが「コモンズの悲劇」においてハーディンが展開したコモンズの理論である。 ハーディンはこの解決策として、国家による管理か、私有地への分割を主張する。そして、ハーディン論文以降、さまざまな論者によりコモンズの理論についての研究が行われてきたが、国家による管理か、私有地への分割かという二者択一的なアプローチではない、第3の選択肢を見出そうとする研究が出てきている。日本では入会地が代表的なコモンズといえる。伝統的なコモンズは森林、牧草地などであるが、科学技術が発達した現代では、サイバー空間などの新しいコモンズもあらわれている。
(小野英一)