コミュニティ・ビジネス

 政府による「新しい公共」が推進されるなかで、地域の課題解決に貢献する事業形態の1つとして、コミュニティ・ビジネスに対する関心が高まっている。コミュニティ・ビジネスとは、おもに地域が抱える課題に対して、地域が有する資源を活用した事業の提供を通じて、地域社会に貢献することを目的とした住民主体の事業を指し、高齢者福祉のほか、地域活性化や子育て支援など、地域固有の課題解決に事業を通じて貢献するボランティアと企業の中間領域を担う自律的な経営を行う主体である。特に、コミュニティ・ビジネスと称する場合は、実施主体の法人格や活動目的の非営利性の有無に対する議論よりも、事業の地域性を重視した事業を説明する場合に用いられることが多いため、組織の形態としては、営利組織である企業やNPO法人、組合、住民団体といったNPOまで多様な形態が想定される。コミュニティ・ビジネスは、中心となる事業主体だけでなく、地域が有する固有の資源が積極的に活用されることによって、地域コミュニティの再生や活性化のほか、新たな雇用機会の創出なども期待される。日本では、2000年頃から全国で大規模な市町村合併が行われ、抜本的な行政サービスの効率化がすすめられた。さらに、急速な高齢化によって、全国的に高齢者福祉サービスなど、地域における公共サービスの不足が顕在化した。公共サービスの不足に起因する地域の課題に対し、住民組織やNPOが自発的に高齢者生活支援サービスや買い物支援などの高齢者支援、地域活性化、環境保全など、地域に根差した活動を実施するようになり、この頃からコミュニティ・ビジネスという名称が用いられるようになった。近年では、地域住民組織による互助的な活動からソーシャル・ビジネスと呼ばれる収益事業まで、地域における新しいビジネスモデルとして全国に広まりをみせている。
(中嶋貴子)