コミュニティ・サービス

 日本において統一した定義はないが、社会奉仕活動、地域貢献活動を意味する概念として活用されている。文部科学省によれば、アメリカでは、1993年のNational and CommunityService Trust Act of 1993により、「アメリカ社会全体が直面している社会福祉、教育、環境、治安等の緊急の課題に対して、すべての年齢の国民が協力して取り組むこと」(諸外国におけるボランティア活動に関する調査研究実行委員会「諸外国におけるボランティア活動に関する調査研究報告書」[2007])と定義されている。具体的には、①「アメリカ社会全体が直面している社会福祉、教育、環境、治安等の緊急の課題に対して、すべての年齢の国民が協力して取り組むことである。コミュニティ・サービスを通じて、コミュニティを改善し、よりよい市民になることができる。」、②「また、コミュニティ・サービスへの参加は、市民としての責任感を涵養し、ひいてはコミュニティ全体の意識の向上を図ることができる。」、③「コミュニティ・サービスの担い手は、すべての国民であるが、法律では、低所得者層や青少年に焦点を当てている。特に、青少年は、コミュニティ・サービスの実践を通じて、自身の能力向上を図ることが期待され、将来的にはコミュニティのリーダーとなることが期待される。」である。
 なお、このコミュニティ・サービスを教育プログラムに取り入れたのがサービス・ラーニング(service learning)である。アメリカの教育現場では先の法律よりも早く1980年代に課外授業として試みられており、コミュニティ・サービスの定義に社会的責任や教育的効果等も視野に入れたことが理解できる。日本でもアクティブ・ラーニング(activelearning)の手法の1つとして大学等において導入され始めている。その経緯を確認すると、平成10(1998)年、大学審議会は、答申「21世紀の大学像と今後の改革方策について―競争的環境の中で個性が輝く大学―(答申)」において、「ボランティア活動等地域社会に貢献する活動を授業に取り入れ」ることの重要性を指摘した。平成14(2002)年の中央教育審議会の答申「青少年の奉仕活動・体験活動の推進方策等について(答申)」では、サービス・ラーニングの用語が使用されている。そして、平成24(2012)年の同審議会の答申「新たな未来を築くための大学教育の質的転換に向けて〜生涯学び続け、主体的に考える力を育成する大学へ〜(答申)」では、学士課程教育の質的転換のため「能動的学修(アクティブ・ラーニング)への転換が必要」であるとして、「インターンシップやサービス・ラーニング、留学体験といった教室外学修プログラム等の提供が必要である。」との提言がなされている。この答申の用語解説においては、サービス・ラーニングの定義等を筑波大学人間学群サービス・ラーニングのホームページを踏まえ、「教育活動の一環として、一定の期間、地域のニーズ等を踏まえた社会奉仕活動を体験することによって、それまで知識として学んできたことを実際のサービス体験に活かし、また実際のサービス体験から自分の学問的取組や進路について新たな視野をえる教育プログラム。サービス・ラーニングの導入は、①専門教育を通して獲得した専門的な知識・技能の現実社会で実際に活用できる知識・技能への変化、②将来の職業について考える機会の付与、③自らの社会的役割を意識することによる、市民として必要な資質・能力の向上、などの効果が期待できる。」と整理している。
(黒木誉之)