コミュニケーション

 各種メディアを媒介にして送り手の感情や意志を受け手に伝える過程であり、組織内外の意思決定過程さらには実行過程においてつねに生じる現象である。こうしたコミュニケーションが組織にとってどのような役割を果たすかについて、これまで多くの研究がなされてきた。経営学の分野でその重要性を指摘した萌芽的実験は、ホーソン実験であり、公式の伝達ルート以外の非公式の伝達ルートが従業員のモラールひいては組織の生産性にも影響を及ぼすことを指摘した。そしてBarnard, C. I.( バーナード)により、共通する目的とメンバーの貢献意欲に加えて、相互に意思を伝達するコミュニケーションの3つが公式組織の成立条件であることが主張された。さらにSimon, H. A.( サイモン)によって、組織は意思決定とその実行のプロセスを含めた人間集団におけるコミュニケーションおよび関係のパターンと捉えられた。コミュニケーションは、そうした意思決定の前提に影響を及ぼす要素であり、人間のもつ意思決定の合理性の制約を克服するための組織側からの働きかけであることを強調した。コミュニケーションは、媒介になるメディアの種類によって公式のコミュニケーションと非公式のコミュニケーションに区分することができる。たとえば、公式文書やデータなどをもとにした公式のコミュニケーションもあれば、対面での口頭による非公式のコミュニケーションも存在する。あいまいさや多義性を少なくする意味では非公式の対面コミュニケーションのメディア・リッチネスが高い。またコミュニケーションのパターンとしては、組織内の公式の指揮命令系統に沿って垂直的な縦のコミュニケーションが行われる鎖型タイプ、特定のリーダーとその他のメンバーとの1対1の縦のコミュニケーションが行われる輪形タイプ、そしてメンバー全員が他のメンバーと水平的な横のコミュニケーションをとるウェブ型タイプの3つに分類できる。コミュニケーションが機能する領域を考えると、上司と部下との垂直的コミュニケーションや部下同士の水平的コミュニケーションなど組織内のマネジメントにかわわるコミュニケーションが考えられる。しかし組織内だけではなく、組織外の多様なステークホルダーとの組織間コミュニケーションの比重も高まってきている。こうしたステークホルダーとの良好な関係を醸成するコミュニケーションが組織のイメージや評価に繋がり、ひいては組織成果にも影響を及ぼすことになる。
(佐々木利廣)