(吉田忠彦)
コミットメント
一般的にはかかわりをもつことや、強い関心をもつこと、執着してことにあたること、結果に責任をもつことなどを意味する。しかし分野によって意味が少し異なっていたり、より限定的な意味を指す場合がある。心理学をベースとしたミクロ組織論においては、精神的あるいは情緒的なコミットメントと、功利的あるいは計算的コミットメントとに分類される。いずれにしても組織あるいは仕事との関係性のなかでの個人の心性や態度としてコミットメントが捉えられる。他方でゲーム理論を取り入れた行動経済学では、自分の行動を事前に自分で縛ることでその後の選択を意図的にコントロールすることをコミットメントと呼んでいる。実際の人間の行動の選択においては、短期的な利益を過大評価してしまったり、合理的ではないことが分かっていながら目先の利益を優先してしまったり、長期的には不利になることを知りながら選択を先送りしてしまったりすることがある。そのような選択や行動が取れないように、先に約束したり、公に宣言することがコミットメントであり、それによって不利な意思決定を制限できるとする。このような将来的に不利になる先送り行動を封じ込め、計画を確実に実行できるように、将来の行動に制約をかける仕組みをコミットメントデバイスという。具体的には、計画や契約の執行を先送りするとペナルティが科されるようにしておく、先送りや短期利益を選択することができないような環境にしてしまうなどの方法がある。