子どもの権利条約

 平成元年(1989)年に第44回の国連総会で採択され、翌年に発効された子どもの権利に関する具体的規定がなされた前文と54条からなる国際条約である。日本においては、正式名称が「児童の権利に関する条約」という。同条約3では、「子どもの最善の利益」を第一に保障することが定められ、18歳未満の子どもを対象として(同条約1)、生きる・育つ権利(同条約6)、意見表明する権利(同条約12)、教育への権利(同条約28)など子どもを保護の対象とする受動的な存在だけでなく、子どもに権利の主体権者としての能動的な存在を保障したところに特徴がある。平成28(2016)年に児童福祉法の一部が改正され、第1条に「全て児童は、児童の権利に関する条約の精神にのっとり」と明記し、日本の児童福祉において、子どもの権利条約の内容が第一義的な考えとして用いられるようになった。また国は、改正法を具体化していくため「社会的養護の課題と将来像」(平成23[2011]年)を見直し、「新しい社会的養育ビジョン」を告示した。「新しい社会的養育ビジョン」の骨格として、地域、家族の変化、それに伴う私的養育が弱まった背景に伴って、子どもの権利や子どものニーズさらに家庭のニーズをも考慮し支援を行うためのソーシャルワーク体制の構築と里親の推進など支援の拡充が図られている。また、社会的養護においても「社会的養護には、保護者と分離している場合と分離していない場合の両者を含む」として、今までの大舎制の「施設養護」や「家庭養護」といった「家族からの分離」を前提としたケアから、里親養育や小舎制の施設養護など子どもが住み慣れた地域や家庭で育つことを重視した子どもの最善の利益を保証するケアがなされるように整備がすすめられている。
(小口将典)