固定資産の減損

 固定資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態をいう。そのような場合営利企業においては、「減損処理」すなわち一定の条件のもとで回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額することが要請されている。具体的には、「減損の兆候」があり、かつ、減損テスト(impairment test)の結果、減損損失を認識すべきであると判定された場合に、固定資産の帳簿価額を回収可能価額すなわち「正味売却価額と使用価値のいずれか高い方の金額まで減額し、当該減少額を減損損失として当期の損失とする。」(固定資産の減損に係る会計基準)。独立行政法人や国立大学法人の会計基準には、上記と類似する規定が置かれている。他方「公益法人会計基準」には、つぎのような規定がある。「資産の時価が著しく下落したときは、回復の見込みがあると認められる場合を除き、時価[≒正味売却価額]をもって貸借対照表価額としなければならない。ただし、有形固定資産及び無形固定資産について使用価値が時価を超える場合、取得価額から減価償却累計額を控除した価額を超えない限りにおいて使用価値をもって貸借対照表価額とすることができる。」(第2、3、⑹)。この規定により公益法人の場合、固定資産の時価が著しく下落し回復可能性がない場合には、時価と使用価値のいずれか高い方の金額まで帳簿価額を減額すべきこととなる(使用価値での測定は任意である)。従って公益法人の場合も、結果的には、営利企業における固定資産の減損処理とほぼ同内容の要請がされているといえる。上記と同様の規定は、「医療法人会計基準」にも置かれている。それ以外の非営利組織会計基準には、仮に資産全般についての強制低価の規定はあっても、営利企業における固定資産の減損処理に類した規定は置かれていない。
(内倉 滋)