国立大学法人

 国立大学法人法に基づき、国立大学を設置する法人であり、行政改革の一環である独立行政法人の1つである。国立学校設置法に基づき国の行政機関として置かれてきた国立大学は、平成16(2004)年4月、すべて国立大学法人のもとに置かれた。法人業務は学長が総理し、学長は学校教育法に定められる学長職務と双方の権限と責任を有する。重要事項を審議する役員会が、学長および学長が任命する理事によって構成される。学長の諮問機関として、おもに教学面を審議する教育研究評議会、おもに経営面を審議する経営協議会が置かれる。教育研究評議会は教学に関する学内の代表者、経営協議会は経営に関する学内の代表者と学外の有識者によって構成される。経営協議会においては学外委員が過半数を占めなければならない。学長は教育研究評議会および経営協議会の学外有識者の代表によって構成される学長選考会議が選考し、文部科学大臣が任命する。多くの大学で、選考過程において構成員による意向投票が行われている。各法人は、独立行政法人と同様、中期(6年)目標原案を作成、文部科学大臣が定めた後、それを具体化する中期計画を作成、文部科学大臣の認可を受ける。文部科学大臣は目標、計画について国立大学法人評価委員会の意見を聞かなければならない。計画は年度計画へと落とし込まれ、年度末には業務報告書を国立大学評価委員会に提出する。目標期間終了後には経営面を含む業績全体を国立大学評価委員会の、教育・研究の業績については大学評価・学位授与機構の評価を受ける。この目標管理システムが大学にふさわしいかどうか、また、大学の自主性と政府の政策推進とのかかわりについて問われてきている。役員として監事2人が文部科学大臣の任命によって置かれ、監事監査が行われる。会計監査人による財務監査が義務づけられ、日常業務の内部監査人監査を含め「三様監査」のシステムが取られている。財政は、教育研究経費や人件費など基盤的経費を賄う財源としての運営交付金および学生納付金と、科学研究費、受託研究、寄付金、文部科学省の政策的補助金などの競争的資金・外部資金からなる。運営交付金はほぼ毎年1%削減され、財源の50%近くから3分の1近くにまで低下してきている。その結果、大学間の格差が広がり、人件費が抑制され、人事の停滞、非正規教員の増加といった状況も生まれている。平成28(2016)年の法改正により「指定国立大学法人制度」が制定された。国際的な競争環境のなかで世界的な有力大学に対抗すべく、世界最高水準にあると認定した大学を指定し、規制の特例を設けて推進する。令和2(2020)年現在、東北大学、東京大学、京都大学、東京工業大学、名古屋大学、大阪大学、一橋大学が指定されている。制定時は1法人1大学として制度化されたが、令和元(2019)年の法改正によって1つの法人のもとに複数の大学を設置することが可能になった。法人の代表者と学長が分離することになり、ガバナンス構造が変化する。
(川口清史)