国民医療費

 当該年度内の医療機関などにおける傷病の治療に要した費用を推計したものをいう。具体的には医科診療や歯科診療にかかる診療費、入院時食事・生活医療費、訪問看護医療費、薬局調剤医療費、柔道整復師・はり師等による治療費、移送費、補装具の費用である。保険診療の対象とならない評価療養、選定療養、不妊治療における生殖補助医療等に要した費用は含まれない。また傷病の治療費に限定しているため、正常な妊娠や分娩に要する費用、健康診断、予防接種等に関する費用、義眼や義肢等の費用も含まれない。昭和29(1954)年度以降、国民医療費は毎年推計されているが、昭和36(1961)年国民皆保険後の増加は著しい。平成25(2013)年度国民医療費は、ついに40兆円を超え、最新の平成29(2017)年度国民医療費は43兆710億円、前年度42兆1,381億円(薬価改定等により前々年度に比べて2,263億円減少)から9,329億円(2.2%)増加している。同じく人口1人当たりの国民医療費は33万9,900円、前年度の33万2,000円に比べて7,900円(2.4%)の増加である。また国民医療費の国内総生産(GDP:Gross Domestic Product)に対する比率は、7.87%(前年度7.85%)、国民所得に対する比率は10.66%(同10.77%)である。制度区分別国民医療費は、公費負担医療給付分、医療保険等給付分、後期高齢者医療給付分、患者等負担分に大別される。2017年度の医療保険等給付分は19兆7,402億円、構成割合の45.8%を占めている。財源別国民医療費は公費16兆5,181億円(構成割合38.4%)、保険料21兆2,650億円(同49.4%)、その他5兆2,881億円(同12.3%)となっている。このように国民医療費が増加する背景には、人口の高齢化、新規の医薬品や医療機器の導入などの医療技術の進歩がある。
(河谷はるみ)