公立病院改革

 公立病院改革は、これまで赤字経営の多い公営事業の経営改善に由来する。総務省による財政健全化法(地方公共団体の財政の健全化に関する法律)に基づく各自治体の財政再建がねらいである。当該改革は、各自治体による公営事業の赤字経営に民間の経営手法を導入した改革であり、公立病院改革ガイドライン(平成19[2007]年12月:前ガイドライン)の公表によって始まった。そのなかでは、経営の効率化、再編・ネットワーク化、経営形態の見直しが示された。①経営の効率化として、公立病院の経営状況別および病床規模別の経営指標目標を設定し、PDCAサイクルによる経営改善を行い、②再編・ネットワーク化によって公立病院数を削減し、地方財政処置(地方交付税処置)を行う、さらに③経営形態の見直しによって、地方独立行政法人化・指定管理者制度の導入・民間譲渡および診療所化をすすめる計画であった。その後前ガイドラインは「新公立病院改革ガイドライン」(平成27[2015]年3月)に引き継がれ、新ガイドラインでは3つの柱に「地域医療構想」が加わり、各都道府県は医療法に基づき、「地域医療構想」(原則:2次医療圏)を策定した。「医療機能等指標に係る数値目標」のほかに、「経営の効率化の数値目標達成に向けた具体的な取組例」が公表され、その後、各公立病院には新公立病院改革プラン(令和2[2020]年度期間までの策定)が要請された。  一方、厚生労働省(厚労省)は、医療提供体制の改革(病床機能の分化・連携)を実施し、「医療介護総合確保推進法」(平成27[2015]年)のもとで、医療と介護を総合的に確保する体制を整備した。当該医療提供体制の改革では、各自治体が「地域医療構想を踏まえた役割の明確化」の視点に立ち、令和7(2025)年の機能別の医療需要・必要病床数を目指した地域医療構想・地域包括ケアシステムを踏まえて、「地域完結型医療」に向けた体制が構築された。しかし公立病院の経営改善および組織再編には課題が多く、地方独立行政法人化は停滞している。そのため「地域医療構想」の新たな形として、「医療機関相互間の機能の分担および業務の連携を推進する」ために、医療法第7次改正(平成27年)のもと、第7次医療計画(平成29[2017]年)では、「地域医療連携推進法人」(医療法70)が創設された。当該法人もまだそれほど多くない。公立病院の組織および統合等の組織再編よりも地方公営企業法の「財務規定一部適用」から「全部適用」へ移行した公立病院が多いのが現状である。
(森美智代)