公的医療機関

 医療法31において、つぎの者が開設する医療機関であるとしている―日本赤十字社(日赤)、社会福祉法人恩賜財団済生会(済生会)、社会福祉法人北海道社会事業協会(北社協)、全国厚生農業協同組合連合会(厚生連)、国家公務員共済組合連合会(連合会)、公立学校共済組合(公立学校)、都道府県、市町村、一部事務組合の病院(自治体)、社団法人全国社会保険協会連合会(全社連)、財団法人厚生年金事業振興団(厚生団)、財団法人船員保険会(船員保険)。公的医療機関は、「戦後、医療機関の計画的整備を図るにあたり、国民に必要な医療を確保するとともに、医療の向上を進めるための中核としての役割」(公的医療機関2025プラン)を担っている。それは、「医療のみならず保健、予防、医療関係者の養成、へき地における医療等一般の医療機関に常に期待することのできない業務を積極的に行い、これらを一体的に運営」することであり、公的医療機関は地域医療に関係する不採算性の医療を基盤とした「地域医療構想」の構築に中心的な役割を果たしている。この地域医療構想は、都道府県知事の権限(医療法7の2Ⅰ)のもと、毎年度4回をめどに地域医療構想調整会議が開催され、当該会議で、各医療機関は①医療機能や診療実績、②地域医療介護総合確保基金を含む各種補助金等の活用状況について報告しているが、公立病院・公的病院等は、病床稼働率、紹介率・逆紹介率、救急対応状況、医師数、経営に関する情報等についての報告が求められている。公立病院の「新公立病院改革ガイドライン」、公的医療機関の「公的医療機関2025プラン」の策定の背景には、近年、日本の人口減少、少子高齢化が加速する社会現状に伴い、医療・介護給付の財源不足がある。日本は日本国憲法第25条に従って、①「すべて国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」、②「国は、すべての生活部面について社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」として、生存権を基盤とした国民皆保険制度が整備されている。しかし国民への医療および介護の提供、年金等の社会保障費の拡大傾向にあるなかで、それを補塡する財源は国や地方自治体の税負担で賄われなければならない。その財源を賄うために、令和元(2019)年には社会保障・税一体改革により消費税率の引き上げが実施されたところである。日本の医療・介護提供体制は「病院完結型」から「地域完結型」医療へ向けた医療政策がすすめられており、各都道府県は地域医療構想を構築するために「公的医療機関2025プラン」を遂行している。
(森美智代)