更生保護法人

 更生保護事業法(平成7[1995]年制定、平成8[1996]年施行)に基づき更生保護事業を営むことを目的として法務大臣の認可をえて設立された法人で、その事業の公益性の高さから特定公益増進法人となっている。更生保護事業とは、犯罪や非行をした者の改善更生を助ける事業のことで、①継続保護事業、②一時保護事業、③連絡助成事業の3つに大別される(更生保護事業法2)。対象となる「被保護者」は、保護観察に付されている者、懲役、禁錮または拘留の刑の執行終了者・執行免除者・執行停止者、懲役または禁錮の執行猶予の裁判確定前の者や単純執行猶予者で刑事手続上の身体拘束を解かれた者、少年院の退院者等である(同法2Ⅱ①〜⑩)。 更生保護事業のうち、「継続保護事業」とは、改善更生のために保護を必要としている「被保護者」を更生保護施設(同法2Ⅶ)に収容し、宿泊場所を供与し、教養訓練、医療・就労支援、社会生活に適応するための生活指導等、改善更生に必要な保護を行う事業をいう(同法2Ⅱ)。「一時保護事業」とは、「被保護者」に対し、更生保護施設に収容せずに、帰住、医療、就労を助け、金品の給与や貸与、生活相談等、改善更生に必要な保護を行う事業である(同法2Ⅲ)。「連絡助成事業」とは、継続保護事業、一時保護事業、その他「被保護者」の改善更生を助けることを目的とする事業に関する啓発、連絡、調整や助成を行う事業をいう(同法2Ⅳ)。またここでいう「その他」に当たる事業とは、保護司会、更生保護女性会、BBS(Big Brothers and Sisters movement)会、協力雇用主会などの団体の活動を指す。  かつて、更生保護施設は、「更生保護会」という旧民法34に基づく公益法人(社団法人、財団法人)が営んでいたが、更生保護会が社会福祉法人と同等の法的・社会的地位をえて、更生保護事業の充実と発展を図るために、更生保護事業法を制定し、公益法人に代わる特別の法人として平成7(1995)年更生保護法人制度が創設された。更生保護法人は、更生保護事業を適正に行うため、自主的に事業内容を向上させ、経営の基盤強化と透明性の確保を図ることが求められる(同法5の2)が、更生保護事業に支障がないかぎり、公益事業、その収益を更生保護事業や犯罪や非行をした者の改善更生や犯罪予防に資するものとして法務省令で定める公益事業に充てることを目的とする収益事業を行うことができる(同法6)。法人組織については、役員として理事5人以上、監事2人以上を置かなければならず(同法16)、監事の兼職禁止(同法20)、役員の親族等の排除規定(同法22)や評議員会に関する規定(同法26)等、厳格な管理規定を整備することで公益性を図っている。全国更生保護法人連盟によると、更生保護法人は令和2(2020)年2月現在で全国に164法人存在する。
(李 庸吉)