向社会的行動

 何らかの外的な報酬を期待することなく、自由な意思によって他者や他の集団に恩恵を与えるような他者の利益を意図した行動である。人々の援助行動分析に対する実験社会心理学によるアプローチから発展し、反社会的行動と対比して向社会的行動と呼ばれるようになった。代表的な向社会的行動としては、人助けやボランティア活動など他者への「援助」(helping)がある。向社会的行動の動機には、利他的な動機だけなく、自己の利益や社会的承認を求める利己的動機によるもの、社会的な要求に応じるための負担感によるもの、人道的な支援活動や個人的な道徳感や価値感などがある。そのため、向社会的行動の定義において、自発性を条件に含めるかについては見解が分かれる。このように、向社会的行動は、個人の社会的価値観によって動機づけされることが多く、集団協力行動、対人行動、寄付行動、ボランティアへの参加動機なども対象とされる。向社会的行動の動機や参加促進については、社会学や教育学のほか、行動経済学などの研究領域でも研究対象とされている。
(中嶋貴子)