公私分離の原則

 日本国憲法(憲法)第25条では、国が国民の最低生活権を保障する責任があり、その生活面では社会福祉、社会保障等の増進に努めなければならないとしている。一方で憲法第89条では、宗教上の組織や私的団体、または国の支配に属さない私的な慈善、教育等の団体に対して国が資金を提供したり、国の財産を使用させてはならないとしている。憲法第89条の、後半の内容が公私分離の原則といわれている。憲法第25条と憲法第89条は、一見してその規定内容が矛盾しているようにも思われるが、たとえば私立学校への助成で、国の支配に準じていれば国庫補助をえられるようになっており、また社会福祉事業では本来であれば国が行うべきものを民間の施設に委託したもの(措置委託制度)と捉えている。ただ、実際問題として、いずれにしてもその維持管理や建て替えのために公的資金が投入されなければ達成できないことが多い。このように憲法第89条が拡大解釈され、運用によっていることが適切であるかについては多くの議論がなされてきている。
(成道秀雄)