(吉田忠彦)
公共財
経済学では、財の性質を排除性と競合性から分類し、排除性も競合性もないものを公共財とする。多くの財は同時に複数の者が利用することができず、また所有権をもたない者を財の利用から排除することが可能であるために、商品として市場で取引される(私的財)。しかし、その排除性や競合性が欠けてしまうと市場での取引が困難となる。競合せず、また費用を負担しなくても利用できるという財の場合、その費用を負担せずに利用するフリーライダー(ただ乗り)が発生し、提供しようとする者は費用を回収できなくなるため、市場においては誰もその財を提供しなくなる。このような状況を市場の失敗と呼び、それを供給する方法として政府による市場の補完が行われる。つまり、非排除性・非競合性のある財のうち、人々のニーズがあり、費用をかけて供給する必要がある場合に、その費用を強制力をもつ政府が人々から公平・平等に徴税し、それによって費用を賄うという方法である。しかし、排除性や競合性は完全な状態ではなく、それぞれ程度の問題であり、その度合いによって政府による供給と民間による提供とが混合される場合や、民間が提供するものの料金や参入者を政府が規制する場合などさまざまなバリエーションが生まれる。ここに公企業、公益事業体、そして公的資金を受ける民間非営利組織などが発生する理由がある。また、一般的に公共財は市場の失敗が起こるために政府によって補完(供給)されるとされているが、実際には政府の財源などの事情により平均的な消費者の需要を中心に一定量あるいは一定範囲でしか供給されないことがある。そうすると平均的な消費者の需要とは異なる量または質のサービスを必要としている一部の消費者には供給されないことになる。その需要をカバーするのが非営利組織の役割であり、その存在理由であると説明するのが公共財理論である。