公共圏

 Arendt, H. (アーレント)やHabermas, J.(ハーバーマス)などによって用いられる概念で、人々が生活のなかで共通の関心をもつことによって成立する空間で、そこにおいて人々は言説の実践を行い、それに対する応答を受けながら、他人や社会と相互にかかわり合いをもつ。自己の利害やアイデンティティを、私的なことがらとして社会から切り離され、見捨てられるのではなく、他者に対して意見や行為として投げかけることによって、他者から応答が返され、社会との繋がりが見出せることになる。社会に対して自己の利害やアイデンティティを訴えるための手段の1つが、利害やアイデンティティを共有したり、それを支援する人々と集合的行動をとること、すなわち組織での活動である。自発的な非営利組織はそうした活動の受け皿となるのである。公共的空間、公共性と同義とされることもあれば、特定の人々の言説空間を公共圏、より広い不特定多数の人々の言説空間を公共的空間と区別して論じられることもある。
(吉田忠彦)