公益目的支出計画

 特例民法法人(旧民法34法人である社団・財団法人)が新公益法人制度において、一般社団・財団法人に移行しようとする場合は、一般社団・財団法人に移行した後に移行時に保有する純資産額(正味財産額)を基礎として算定した額(公益目的財産額)がある場合に当該公益目的財産額に相当する金額を、計画的に公益の目的に支出するための計画をいう。そして、公益目的支出計画に従って、一般社団・財団法人へ移行した後に公益目的財産額に相当する金額を公益の目的のために支出することになる。公益目的支出計画で実施できる事業等とは、①継続事業(特例民法法人が一般社団・財団法人への移行の認可を受ける前から継続して実施する公益に関する事業をいう。)、②公益目的事業(公益認定法に規定する公益目的事業をいう。)および③公益のための寄附(公益社団・財団法人、学校法人、社会福祉法人、更生保護法人、独立行政法人、国立大学法人、大学共同利用機関法人、地方独立行政法人等に対する寄附、国、地方公共団体に対する寄附をいう。)をいう。なお、公益目的支出計画は土地の売却等により、法人の財産そのものを処分していくものではなく、数字上の概念であることに注意する。 つぎに、公益目的財産額の算定にあたっては、時価評価を用いる。たとえば、土地の評価方法としては、固定資産税評価額や不動産鑑定士が鑑定した価額などが考えられる。また、有価証券の評価方法については、上場されていることにより市場価格が容易に把握できる場合は市場価格を用いた時価評価を行う。市場性がない場合であっても評価を行うことが可能な場合は時価評価とする。このようにして算定された公益目的財産額に相当する金額まで公益目的支出額を積み上げていくのであるが、もし、公益目的支出額に関する公益目的事業が収入を伴う場合には当該収入額を支出額から控除しなければならないとされている。移行時に算定された公益目的財産額から公益目的支出計画の実施期間における各年度の公益目的支出額の累計額を控除した残額を公益目的財産残額という。従って、公益目的財産残額がゼロとなったときが公益目的支出計画の実施が完了したときとなる。また、公益目的支出計画の実施期間については、特に制限はなく、法人の意思を尊重することが適切とされた。ただし、法人の実施事業等の遂行能力と比較して、明らかに設定された公益目的支出計画の実施期間が不相応に長期であると考えられる場合は、実施期間の変更が求められることもある。
(亀岡保夫)