公益法人の設立許可及び指導監督基準

 旧公益法人制度において、主務官庁が所管する公益法人に対して、統一的な指導監督を行うために平成8(1996)年9月20日に閣議決定された基準をいう。この「公益法人の設立許可及び指導監督基準」(指導監督基準)に基づいて指導監督を行うとともに、その実施状況を明らかにするためとして、「公益法人に関する年次報告」(公益法人白書)を毎年度作成することとされており、そのきっかけとなった。指導監督基準は、①目的、②事業、③名称、④機関、⑤財務および会計、⑥株式の保有等、⑦情報公開、⑧経過措置等から構成されており、それぞれについて「公益法人の設立許可及び指導監督基準の運用指針」(平成8年12月19日、公益法人等の指導監督等に関する関係閣僚会議幹事会申合せ)において詳細が定められている。指導監督基準は2度改正されており、平成9(1997)年12月16日の改正では、公益法人の財務諸表等が一般の閲覧に供されることとなり、平成18(2006)年8月15日の改正では、理事現在数における所管する官庁の出身者が占める割合が3分の1以下と定められていたところ、その「所管する官庁の出身者」について、「常勤の職員として職務に従事した者」と明確化された。これは改正前の指導監督基準の運用指針に「所管する官庁の出身者」について、①本省庁課長相当職以上(教育職、研究職、医療職は除く。)を経験、②その者のいわゆる「親元省庁」が当該法人を所管する官庁、③退職後10年未満の間に当該法人の理事に就任(公務員を退職後5年以上経ており、この間、当該法人の職員に就いていた者を除く。)、という3つの要件をすべて満たす者と規定していたため、そのため多くの所管官庁OBは「所管する官庁の出身者」に該当しないという点が天下りを隠蔽するものとして問題視されたものである。平成20(2008)年の公益法人制度改革関連三法の施行後も「特例民法法人の指導監督について」(平成20年11月11日、公益法人等の指導監督に関する関係省庁連絡会議幹事会申合せ)により、「公益法人」を「特例民法法人」として読み替えることとなり、公益社団・財団法人、一般社団・財団法人に移行を終えるまでの間、旧公益法人に適用されることとなった。指導監督基準閣議決定までの経緯としては、つぎのとおりである。公益法人の設立許可および指導監督に関する権限は、主務官庁に与えられていたが(旧民法34、67)、その権限は、国の府省にとどまらず、都道府県や地方支分部局にまで委任することができるとされていた。このようなことから、多岐にわたる所管官庁が公益法人に対して統一的に指導監督を行うための拠るべき基準が求められるようになり、昭和46(1971)年以降、各省庁の課長クラスが「公益法人監督事務連絡協議会」を設け、昭和60(1985)年には局長クラスの「公益法人等指導監督連絡会議」が設置されて、「公益法人設立許可審査基準等に関する申し合せ」(昭和47[1972]年3月23日、公益法人監督事務連絡協議会)、「公益法人の運営に関する指導監督基準について」(昭和61[1986]年7月22日、公益法人指導監督連絡会議決定)、「公益法人の設立許可について」(平成7[1995]年3月29日、公益法人等指導監督連絡会議決定)等を定めて、統一的な指導監督等を行うために必要な連絡調整、各種の統一的基準の策定等が行われた。しかし、行政委託型公益法人や営利競合等の問題が指摘されるようになると、与党行政改革プロジェクトチームが、平成8年7月3日に「公益法人の運営等に関する提言」を政府に提出し、これを踏まえ、公益法人に対する指導監督の一層の適切化・透明化等を統一的に推しすすめるために新たな基準として、指導監督基準が「公益法人に対する検査等の委託等に関する基準」とともに閣議決定された。
(桑波田直人)