公益法人等課税制度

 公益法人等に対する法人税の課税は原則非課税・収益事業課税の制度が採用されている。公益法人等が収益事業を行う場合に、その収益事業における所得金額についてのみ法人税が課される。法人税の課税対象となる収益事業については、法人税法施行令5に定める34業種について一定の事業場を設けて継続的かつ反復的に行われるものをいう。ただし、①公益社団・財団法人が行う事業のうち公益目的事業に該当するもの、②その事業に従事する身体障害者または寡婦等の一定の者がその事業に従事する者の総数の半数以上を占め、かつ、その事業がこれらの者の生活の保護に寄与しているものについては、その要件を充足する場合であっても課税対象には含まれない。公益法人等がその収益事業に属する資産のうちから非収益事業に係る事業のために支出した金額がある場合には、収益事業の所得金額の計算上、これを寄附金とみなされ、限度額の枠内で損金算入が認められるが、非営利型法人には、このみなし寄附金は適用されない。本則税率は19%とされ、普通法人の本則税率(23.2%)よりも軽減されているが、公益社団・財団法人および非営利型法人に対しては普通法人と同様の税率が適用される。法人が受け取る金融資産収益に対しては所得税の源泉徴収が行われるが、公益法人等に対しては所得税が非課税とされるため源泉徴収も行われない。ただし、非営利型法人については所得税法別表第1に掲げられているものを除いて所得税は非課税とされない。この源泉徴収された所得税については法人税の算定上、所得税額控除の適用がないため取り切りとなる問題がある。公益法人等に対して資金を拠出する者に対する課税制度としては、その拠出先の公益法人等が特定公益増進法人に該当する場合には一定の優遇措置が講ぜられている。また、個人が一定の公益法人等に対して現物の寄附する場合に関しては、時価移転による含み益の実現に伴う所得税の負担を緩和するために譲渡所得等の非課税措置が講ぜられている。
 相続税に関しては、相続または遺贈により一定の公益法人等に対して財産が移転する場合で、その財産がその公益を目的とする事業の用に供することが確実な場合には、その財産の価額は相続税の課税価格に算入されない。同様に、贈与により取得した財産でその公益を目的とする事業の用に供することが確実なものについても贈与税の課税価格に算入されない。また、相続等した者が、その取得した財産をその取得後、当該相続税の申告期限までに、一定の公益法人等に対して贈与した場合にも、その贈与した財産の価額は相続税の課税価格に算入されない。一方で、その遺贈または贈与により、その寄附者の親族その他の特殊関係者の相続税または贈与税が不当に減少する結果となると認められる場合には、その受贈者たる公益法人等を個人とみなして相続税または贈与税が課税される。
(上松公雄)