公益法人制度改革

 日本の公益法人制度は、明治29(1896)年の民法制定以来、歴史的に一定の大きな役割を果たしてきた一方で、100余年にわたり制度の抜本的な見直しは行われず、主務官庁の許可主義のもと、法人設立が簡便でなく、公益性の判断基準が不明確であり、営利法人類似の法人や共益的な法人が多数設立されて、税制上の優遇措置や行政の委託、補助金を受け、天下りの受け皿になるなど、さまざまな批判、指摘を受けるようになっていた。公益法人をめぐる不祥事は公益法人制度そのものに起因するものと捉えられたことから、政府においても公益法人の基本制度について抜本的な見直しを行う必要があると認識された。平成12(2000)年12月「行政改革大綱」が策定され、これを受けて公益法人制度改革について本格的な検討が開始された。平成14(2002)年3月に「公益法人制度の抜本的改革に向けた取組みについて」を閣議決定、公益法人制度について抜本的かつ体系的な見直しを行うこととした。これに基づき、平成15(2003)年6月に、「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」を閣議決定、公益性の有無にかかわらず準則(登記)で設立できる非営利法人制度を創設するとともに、公益性を有する場合の取り扱い等の主要な課題について検討の視点等を明らかにした。そして、平成16(2004)年12月に「今後の行政改革の方針」(閣議決定)のなかで、「公益法人制度改革の基本的枠組み」を具体化し、その基本的仕組みを、①現行の公益法人の設立に係る許可主義を改め、法人格の取得と公益性の判断を分離することとし、公益性の有無にかかわらず、準則主義(登記)により簡便に設立できる一般的な非営利法人制度を創設すること、②各官庁が裁量により公益法人の設立許可等を行う主務官庁制を抜本的に見直し、民間有識者からなる委員会の意見に基づき、一般的な非営利法人について目的、事業等の公益性を判断する仕組みを創設することとした。
 この基本的枠組みに基づき策定された公益法人制度改革関連三法は、平成18(2006)年3月に国会に提出され、同年5月に成立、平成20(2008)年12月に施行された。新制度の柱は、法人格取得と公益認定の切り離し、準則主義による非営利法人の登記での設立、主務官庁制廃止と民間有識者からなる合議制機関による公益認定、公益認定要件の実定化、中間法人の統合、既存の旧公益法人の移行・解散などとなっている。新制度導入時に存在した旧公益法人は、5年以内に新制度の公益法人か一般法人に移行申請する必要があり、この移行期間内に移行申請をしないと法定解散させられることとなった。旧公益法人24,317法人についてみると、平成31(2019)年4月1日現在、8,998法人は新制度の公益社団・財団法人、11,665法人は一般社団・財団法人に移行した。他方、3,650法人は、新制度の法人へ移行せず、合併、その他の法人類型への移行または解散に至っている。新制度導入に伴い税制の整備も行われた。公益法人は、収益事業(34業種)にかぎり法人税の課税が行われ、収益事業が公益目的事業と認定された場合には非課税となる。また、みなし寄附金制度の適用、利子・配当等の金融収益非課税などの優遇措置のほか、法人からの寄附には、特定公益増進法人に対する寄附として、特別の限度額が設けられ、財務大臣が指定した寄附金については、全額の損金算入が認められる。個人からの寄附には、所得控除、税額控除、相続税やみなし譲渡所得税非課税の扱いが講じられている。
(大貫 一)