公益法人制度

 平成18(2006)年6月に成立した公益法人制度改革関連三法施行前の公益法人を旧公益法人、当該関連三法施行後の公益法人を新公益法人という。旧公益法人は、旧民法34に基づき主務官庁の許可をえて設立され、学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他公益に関する事業を行う、非営利を目的とする社団法人および財団法人をいう。戦後、医療、教育、社会福祉、宗教等の公益活動の諸分野について特別法が整備され、民法とは別に公益法人制度が設けられたので、民法に基づく公益法人を狭義の公益法人または民法法人と称し、特別法に基づき設立される公益法人を含めた公益法人を広義の公益法人と称した。ここでは、狭義の公益法人または民法法人を対象とする。民法では、公益法人の設立許可および指導監督に関する権限を主務官庁に与える主務官庁制がとられる。公益法人としての法人格の取得は主務官庁の許可を要し(許可主義)、主務官庁が事業の公益性判断を行うので、法人の設立と公益性の判断は一体的に行われた。このため、公益性判断に主務官庁の裁量が介入し不明確である、公益性のあいまいな団体が公益法人として設立許可を受けている、主務官庁と公益法人との癒着が生じやすいなどの批判があった。このような旧公益法人制度の問題点についての見直しとともに、社会経済システムのなかに民間非営利部門を積極的に位置づけるために、公益法人制度改革がすすめられた。公益法人制度改革は2つの方向ですすめられた。1つは、公益法人設立に係る許可主義を改め、法人格の取得と公益性の判断を分離し、法人の設立について、公益性の有無にかかわらず準則主義によって法人格が取得できる一般的な非営利法人制度を創設することである。これは、公益法人制度改革関連三法のうちの「一般法人法」となる。ほかは、各官庁が裁量により公益法人の設立許可等を行う主務官庁制を抜本的に見直し、民間有識者からなる合議制の機関(公益認定等委員会等)の意見に基づき、一般的な非営利法人について目的、事業等の公益性を判断する仕組みを設けることである。これは「公益認定法」となる。また、「整備法」の施行に合わせて民法の法人に係る規定が改正された。一般法人法では、非営利目的の社団または財団は、その行う事業の公益性の有無にかかわらず準則主義によって一般社団・財団法人となることができる。公益認定法によって、公益目的事業を行う一般社団・財団法人は公益認定を受けることにより、公益社団・財団法人になることができる。これら公益社団・財団法人が新公益法人である。公益認定を受けるためには、公益目的事業を主たる目的とするほか、公益認定法5各号に掲げる要件のすべてを充足し、かつ同法6の欠格事由のいずれにも該当しないことが必要である。公益認定や公益法人の監督等については、行政庁は内閣府に設置される公益認定等委員会または都道府県に設置される同様の合議制の機関に諮問し、その答申に基づいて行うことになっている。
(岡村勝義)