公益法⼈会計基準・同運⽤指針

 平成20(2008)年4月に設定された公益法人会計基準・同運用指針(20年基準)は、公益法人の財務書類等の作成基準を定めたものである。20年基準は、平成16(2004)年改正の旧基準(16年基準)をもとに、公益法人制度改革関連三法による公益法人制度(新制度)に対応したものとなっている。16年基準により、公益法人の財務諸表の体系は資金収支ベースから、損益計算ベースになった。20年基準は、会計基準および注解については、「公益法人会計基準」(会計基準)に、表示に関する項目、別表および様式については、「公益法人会計基準の運用指針」(運用指針)に規定されている。20年基準は、新制度への対応や公益法人の性質から特別の取り扱いが必要な事項を規定しており、規定のない事項は、企業会計の基準を斟酌することになる。会計基準および運用指針における公益法人に特有の事項のうちおもなものは、以下のとおりである。①法令の要請等により必要と認めた場合には、会計区分を設けなければならない(会計基準第1・5)。これは、新制度において公益法人および移行法人は、区分経理が要求されることに対応している。運用指針に、貸借対照表内訳表(公益法人は様式1-3、移行法人は様式1-4)および正味財産増減計算書内訳表(公益法人は様式2-3、移行法人は様式2-4)が示されている。さらに、公益法人は財産目録の作成義務がある(公益認定法21Ⅱ)ことに対応して、運用指針13 ⑹に様式が示されている。②公益法人は多数の者の寄付等に支えられ、不特定多数の者の利益のために活動する。よって、寄付者等の資金提供者に対する受託責任を明確化する観点から、寄付者や補助金の提供者等の意思によって使途が制限されている取引については、正味財産増減計算書の指定正味財産増減の部に計上するとともに、期末残高については、貸借対照表の正味財産の部の指定正味財産に表示される。③正味財産増減計算書の経常経費は事業費と管理費を区分して計上する。これは、公益認定法15により公益目的事業比率の計算が必要なため、公益認定法施行規則13Ⅱで事業費および管理費を区分する必要があることに対応している。④時価のあるその他有価証券については、時価を貸借対照表価額とし、評価差額は当期の正味財産増減額として処理する(20年基準注解10)。当該評価損益については、公益認定法14の収支相償計算の対象から除外されることもあり、経常収益および経常費用と区別して評価損益等の区分に計上される。⑤有形固定資産および無形固定資産について、企業会計とは異なり、時価と帳簿価額を比較して著しく時価が下落している場合に強制評価減が行われ、対価を伴う事業に供している固定資産については、時価を上回る場合に使用価値による評価もできることとなっている(20年基準第2・3⑹)。これは、公益法人の場合は必ずしも投資をキャッシュフローとして回収することを前提としていないことに対応したものである。会計基準の改正については、公益法人の会計に関する研究会の検討を経て内閣府公益認定等委員会が実施する。平成29(2017)年度報告に対応して平成30(2018)年6月に為替差損益の取り扱いの明示等のため運用指針が改正された。令和元(2019)年度報告に対応して、令和2(2020)年5月に会計基準第1総則に継続組織の前提に関する規定の追加等の改正が実施された。
(西村拓哉)