講はもともとは僧尼が仏典を研究するための団体だったことが通説となっており、以後さまざまな団体で講という用語が使用された。宗教関係の講、お伊勢参りなどの代参講、頼母子講などの経済講、地域社会の会費を集める講など、時代時代でさまざまな階層で講がつくられた。互助の協力団体が多い一方で、民間でつくられたことから、経済講以外は、現代でいう非営利組織とほぼ同義と考えてよい。明治時代に入って、経済講のなかには、金融機関になったり企業となったりしたものもあるが、他方で営利を目的とするのではなくほかに明確に組織の目的が公益的である講については公益法人として設立が許可されたものもある。非営利組織研究にとってきわめて有名な講として秋田感恩講がある。江戸時代末期につくられた秋田感恩講は明治時代に公益法人制度が誕生したときに財団法人となり、戦後、社会福祉法人となって現存している。また、業界団体に近い講として街道筋の健全な宿屋を会員とする一新講などが明治の一時期に存在していた。公益法人制度改革まで講を主体とした公益法人は残存していた。たとえば、公益法人から一般社団法人へ移行した講として一般社団法人永代太々巴講、一般財団法人末広町八幡講、一般財団法人角館感恩講がある。
(出口正之)