非営利活動に利用する固定資産に係る減価償却は、その資産の利用にかかわって対価を収受しないかぎり、適正な期間損益計算目的で実施されるものではない。対価のないサービス提供のために利用した固定資産の減価償却費は、それに対応する収益がないためである。また減価償却の自己金融効果は、利益(剰余)の分配を行わない非営利法人には存在しない。その自己金融効果とは、減価償却を上回る十分な収益があったうえで利益(剰余)を配当等として全額組織外に流出させたとしても、収益により獲得した流動資金のうち減価償却費相当額は内部留保されることを指すため、利益獲得を主目的とせず、配当等による組織外流出が生じない非営利法人の場合、減価償却費の有無にかかわらず、内部留保される流動資金に変化は生じないからである。そのため、非営利活動に係る減価償却は、固定資産に投下された正味の貨幣額(支出額)を耐用年数にわたってそれぞれの期間の収益または収入に負担させていくための過程と理解することが合理的である。
(齋藤真哉)