欠損(損失)

 法人税法上の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の損金の額が当該事業年度の益金の額を超える場合の当該超過額を欠損といい、当該事業年度における法人税額が生じないほか、一定の条件を満たすことで他の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入すること等による調整が認められる。すなわち、法人税法上の公益法人等が欠損計上の前1年以内に開始した事業年度において所得を計上していた場合にはこれに繰り戻してその事業年度の所得に対する法人税額の全部または一部の還付を請求することができ、また、各事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度で青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金額(欠損金の繰戻還付の適用額を除く。)については当該欠損金額に相当する金額は損金の額に算入される。また、当該欠損金額が棚卸資産、固定資産または法人税法上の繰延資産について震災、風水害等の災害により生じた災害損失に係るものである場合は、青色申告を要件とせず、各事業年度の所得の金額の計算上10年間の繰越控除が認められる。なお、法人が公益法人等に該当しないこととなった場合は、その資本金等の規模等によっては繰戻還付の規定の適用は現在租特法により時限的に停止されており、また、繰越控除額として損金の額に算入される金額は各事業年度の所得の金額の50%が限度となる。そのため、法人税法上の納税義務者の区分の変更が生じる場合は、繰越欠損金額については所要の調整を行う必要がある。すなわち、普通法人または協同組合等が公益法人等に該当することとなる場合は、当該普通法人等は解散したものとみなして欠損金の繰戻還付の規定が適用される。また、公益法人等が普通法人等に移行する場合や公益法人等を被合併法人とする適格合併が行われた場合には、当該移行日等の前の収益事業以外の事業から生じた欠損金の累積額として計算される額(累積欠損金額)は、当該事業年度における損金の額に算入される。この累積欠損金額は、当該移行日における負債帳簿価額等(負債の帳簿価額および利益積立金額の合計額)が資産の帳簿価額を超える場合の当該超過額とされるが、その計算の基礎となる資産・負債の範囲については法人税法上特に制限は付されていない。また、公益認定を取り消された公益社団・財団法人等が普通法人等に該当することとなった場合は、公益目的取得財産残額に相当する金額が累積欠損金額に加算される。
(古田美保)