決議

 法人の意思形成を経て表出された意思決定である。自主・平等・公正・参加という非営利組織の基本理念が手続きにも反映される。決議を有効にするには、法人機関の招集、決議内容、定足数、表決という決議に至るプロセス過程が法律や規則の定める手続きや要件を満たし、その適正を証する議事録作成が必要である。機関の招集は、招集通知が定款等で定める方法で行われ、通知時期も他の機関との兼ね合いを考慮して行われる必要がある。決議内容は機関の役割と権限で異なる。たとえば、社会福祉法人では、理事会で決議したこと以外を評議員会で決議することや、理事会および評議員会への通知で「報告事項」としていることを評議員会当日に「決議事項」と変更することはできない。議決権は原則みな平等に1人1票である。定款や規則で加重をつけることは可能な場合もあるが、他者の表決権を制限しない留意が必要である。定足数は普通決議では、定款に別段の定めがない場合、機関構成員がもつ議決権の過半数を有する出席で過半数以上で決する。利害関係のある事案については議決に参加できない。定款変更や解散、合併など法人のアイデンティティにかかわる事項は要件が重い特別決議として機関構成員の「3分の2以上」や「4分の3以上」の多数の賛成が必要とされている。定款に「書面による表決」、「電磁的方法による表決」、「表決の委任」を定めている場合は、実際に出席しなくとも、出席者数に含めることができる。このような書面表決が認められず、対面合議を要件としている法人機関もあるが、対面にはテレビ会議を含むとされている。具体的には音声が即時に他の構成員に伝わり、適時的確な意見表明が相互にできるもので、一般的な電話機のマイクおよびスピーカー機能、インターネットを利用する手段などが含まれており、必ずしも物理的に同一の場所で会議を行う必要はないと解されている。また、あらかじめ全員から同意がえらえる場合は、合議体を開催しなくても決議されたものとみなす、決議の省略という制度を利用できる機関もある。この制度は、機関により適用要件が異なる。たとえば、社員総会の決議の省略(一般法人法58Ⅰ、特活法14の9Ⅰ)や評議員会の決議の省略(一般法人法194Ⅰ、社福法45の9Ⅹ)は定款での定めは不要だが、理事会の決議の省略は定款の定めが必要である。理事会と監事が設置されている法人では定款の記載かつ監事が異議を述べないことが要件とされている(一般法人法96、社福法第45の14Ⅸ、医療法46の7の2Ⅰ)。要件が適応しても回答がえられない構成員がいる場合や反対の意思表示があった場合には利用できない。決議の省略は迅速な意思決定を可能とするが、本来は十分な意見交換を行うことで機関の機能が果たされることを鑑みると、やむをえない場合や軽微な事項にかぎられると解される。決議を省略した場合でも適正な手続きを行った説明責任を果たすために議事録作成は必須である。
(棚橋雅世)