欠格事由

 欠格とは要求されている資格を欠くことであるから、欠格となる事項に該当すれば法律要件を欠落することになる。これが「欠格事由」である。たとえば、公益認定の申請をした一般社団・財団法人は、公益認定の基準に適合すると認められたとしても、公益認定法6に規定する欠格事由に該当する場合には、公益認定を受けることができない。また、公益法人は、同条の欠格事由に該当するに至った場合には、公益認定が取り消されることになる(公益認定法29)。この欠格事由を設けた趣旨は、公益法人の名称の使用や税制上の優遇措置の適用という、公益認定に伴う法律上の効果を付与するにふさわしくないものとして、個別の事情を斟酌する必要がない事由およびその一般社団・財団法人の属性やその理事、監事および評議員の人的属性に係る事由を欠格事由として掲げ、これに該当するものを排除することを意図するものである。 公益認定の際には、①理事、監事および評議員が欠格事由に該当していること、②定款または事業計画書の内容が法令等に違反している法人であること、③暴力団員等による事業活動を支配している法人であることが欠格事由となるから、公益認定申請書に当該欠格事由に該当しないことを確認したことを証する確認書を添付することとしている。また、上記①の欠格事由に該当している理事、監事および評議員とは、㋑公益認定法、一般法人法、一定の刑罰法規、国税および地方税に関する法律に違反したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、または執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者、㋺禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行を終わり、または刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者、㋩暴力団員または暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者をいう。これにより、公益認定申請書を提出する場合には、理事、監事および評議員の候補者が欠格事由に該当しないことを確認するため、候補者から誓約書等の提出を求めていると推認できる。反して、誓約書等の提出を求めることは、候補者のセンシティブな情報に立ち入ることになるから、敬遠されることも考えられる。しかし、近年、禁錮以上の刑の執行後5年を経過しない者が理事、監事および評議員に就任していた(公益認定法6①ハ)ことが発覚し、法人の公益認定が取り消される事案が発生している。このような実情を勘案すると、候補者には、欠格事由について十分な説明を行い、誓約書等の提出を求めることが肝要である。なお、公益認定等委員会は、当該欠格事由に該当するか否かを審査するに際して、行政庁が内閣総理大臣の場合には警察庁長官、行政庁が都道府県知事の場合には警視総監または道府県警察本部長に意見を聴くこととしている。
(苅米 裕)