継続組織の前提

 現代の組織体は、特に反証がないかぎり、解散を前提とはせず、組織活動を通して使命を達成し続けることを目指して運営されているとする考え方である。継続組織の前提のもとでは、組織体の解散を待って業績を測定することは不可能であるから、会計は人為的に期間を区切り、業績や財政状態の測定をせざるをえない。従って「組織の計算は期間を区切って行う」とすることが、継続組織の前提である。継続組織の前提は、ゴーイング・コンサーン(going concern)の前提ともいわれる。継続組織の前提により人為的に区切られる期間は、通常1年である。この期間は会計期間あるいは事業年度と呼ばれる。また、継続組織の前提は、組織活動を1年ずつ区切って計算を実行可能にするという形式的意味だけではなく、組織活動が続けられ、組織体は倒産しないという実質的な意味合いも含んでいる。さらに、多くの非営利組織体における会計基準を正当化するための理論的な根拠としても重要である。たとえば、建物についての減価償却の会計処理が正当化されるのは、少なくとも当該建物は耐用年数の間は使用され続け、継続的な組織活動を遂行することを前提としているからである。しかしながら、実際には、倒産や清算によって、組織体は解散することもある。従ってある種の虚構としての側面があるが、実務と理論の両方において必要不可欠な基礎的前提である。なお、現実には倒産の危機が迫っている組織体も存在している。そこで、財務諸表に「継続組織の前提に関する注記」が求められる。たとえば、公益法人会計基準においては、第5財務諸表の注記⑴で「継続組織の前提に関する注記」が求められており、令和2(2020)年の改正においては、第1総則に継続組織の前提に関する規定が追加されている。
(成川正晃)