経営者報酬政策

 株式会社等営利組織における「経営者報酬政策」では、経営者に対する株主のコーポレート・ガバナンスの強化によって企業価値の増大を導く方向性が志向され、株主の長期的な利害と連動するよう、かつ株主への透明性を増す施策がとられる。エージェンシー問題の解決に向け、アメリカでは経営者報酬と企業業績とを連動させて経営者と株主の利害を一致させるべく、ストックオプション等の仕組みがかなり以前から導入され、日本でも同様の動きが近年広がっているほか、改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」では、令和元(2019)年3月期の有価証券報告書から報酬委員会の手続きの概要および活動内容の記載も求められている。他方で、株主等によるコントロールが及ばない非営利組織の「経営者報酬政策」は独自の構成が必要となる。非営利組織に資金が提供される背景には、こうした組織の法人格に組み込まれた非営利性(非分配拘束)と組織への信頼があり、社会的信頼のもとに税制優遇をはじめとする特別なステータスが付与されているのであるから、不当な内部利益の蓄積や配当禁止の抜け道策としての高額な(お手盛り的な)給与支給など、「非分配拘束」逃れのような行動の予防に向け、情報の非対称性のもと、機会主義的な行動を抑制するための施策(説明責任、透明性)が必要となる。たとえば日本の公益認定法では、第20条に定める報酬等の支給の基準に従って報酬等を公表するほか、同法5⑬において、理事等に対する報酬等が不当に高額なものとならないよう支給基準の設定を求めている。このように非営利組織における「経営者報酬政策」は、営利組織におけるものとは違った意味で重要な項目である。
(越智信仁)