経営者

 非営利組織や営利企業などにおいて、事業の経営方針の決定、およびすべての組織成員の指揮・監督を行う最高の責任者、あるいはそれに当たる複数の役職者であり、トップ・マネジメント、チーフ・エグゼクティブと同義である。以下では、非営利組織の経営者について述べる。法律では、非営利組織の公式的な機関の役割と責任はつぎのように定められている。最上位の社員総会は最高意思決定機関である。その下に位置づけられる理事会は代表機関・執行機関である。評議員会は理事会の諮問機関・議決機関である。監事は理事会の監査機関である。事務局は理事会による業務執行の事務処理機関である。なお、組織成員の指揮・監督を行うために、定款や寄付行為によって会長、理事長、専務理事、常務理事、事務局長、代表等が置かれる。このうち専務理事、常務理事、事務局長などが経営者に当たる。このように法律では、理事会が決定とその執行のすべてを行い、それに基づいて専務理事や事務局長を長とする事務局や事業部門が業務執行の事務処理を行うことになる。
 しかし多くの研究は、現実の非営利組織における経営者の役割と責任は、上述の法律で定められたものとは大きく異なっていることを報告している。というのは、理事たちの多くはボランティアとしての経験も豊富で当該組織に関してより深い知識を有しているが、非専従のために時間的な制約に直面しているからである。他方、経営者は専従であり時間的な制約に直面することはないからである。たとえば、Harman, R.D. and Tulipana, F.P.(ハーマンとトゥリパナ)は、経営者に関して支配連合体(dominant coalition)という概念を提示し、つぎのような研究報告を行っている。①非営利組織においては、法律で理事会が最高意思決定機関として位置づけられ、組織としての最終的な意思決定は理事会でなされるという形をとる。②しかし、実質的な政策策定や資源配分をめぐる重要な意思決定は、経営者と一部の理事会メンバーより構成される支配連合体によって行われる。③理事会は、支配連合体が組織の外部環境を吸収し管理するための装置である。また堀田和宏も、理事会のタイプによっても異なるが、実際の経営者は次の10の役割と責任を担っているとする。1. ミッション達成に専心する。2. 財務管理責任を担う。3. 資金調達を指導し管理する。4. 法規や倫理規範に従うよう管理する。5. 理事会に政策策定をさせて、その実施を指導する。6. スタッフ(事務局や事業部門)を指導し、組織を管理する。7. プログラムの質と有効性を確保する。8. 将来のリーダーを育てる。9. 対境関係を構築して組織を代理する。10. 理事会を支援する。
(小島廣光)