しかし多くの研究は、現実の非営利組織における経営者の役割と責任は、上述の法律で定められたものとは大きく異なっていることを報告している。というのは、理事たちの多くはボランティアとしての経験も豊富で当該組織に関してより深い知識を有しているが、非専従のために時間的な制約に直面しているからである。他方、経営者は専従であり時間的な制約に直面することはないからである。たとえば、Harman, R.D. and Tulipana, F.P.(ハーマンとトゥリパナ)は、経営者に関して支配連合体(dominant coalition)という概念を提示し、つぎのような研究報告を行っている。①非営利組織においては、法律で理事会が最高意思決定機関として位置づけられ、組織としての最終的な意思決定は理事会でなされるという形をとる。②しかし、実質的な政策策定や資源配分をめぐる重要な意思決定は、経営者と一部の理事会メンバーより構成される支配連合体によって行われる。③理事会は、支配連合体が組織の外部環境を吸収し管理するための装置である。また堀田和宏も、理事会のタイプによっても異なるが、実際の経営者は次の10の役割と責任を担っているとする。1. ミッション達成に専心する。2. 財務管理責任を担う。3. 資金調達を指導し管理する。4. 法規や倫理規範に従うよう管理する。5. 理事会に政策策定をさせて、その実施を指導する。6. スタッフ(事務局や事業部門)を指導し、組織を管理する。7. プログラムの質と有効性を確保する。8. 将来のリーダーを育てる。9. 対境関係を構築して組織を代理する。10. 理事会を支援する。
(小島廣光)