業務執行理事

 代表理事、代表理事以外の理事であって理事会の決議によって一般社団・財団法人の業務を執行する理事として選定されたものおよび当該一般社団・財団法人の業務を執行したその他の理事をいう、と定義されている(一般法人法113Ⅰ①ロ・198、261Ⅰ③)。業務執行理事は、おのおのに定められた範囲で業務執行権限を有する(一般法人法91Ⅰ、197)とともに、理事会への報告義務を負う(一般法人法91Ⅱ、197)。まず、「代表理事」は、対外的に法人を代表して業務執行を行う権限を有する者として理事会の決議によって選定される(一般法人法90Ⅲ、91Ⅰ①、197)。つぎに、「理事会の決議によって一般社団・財団法人の業務を執行する理事として選定されたもの」は、代表理事からの委任に基づき代表理事の代理人としてしか対外的な業務を執行する権限はなく、法人の機関として対内的な業務の執行を行う点において使用人兼務理事とも区別される。実務上、代表権のない副会長、副理事長、専務理事、常務理事といった名称で業務を執行している場合が多い。最後に、一般社団・財団法人の業務を執行したその他の理事は、理事会の決議によって選定された者ではないが、代表理事等から一部の行為を委任される等により法人の業務を執行する。実務上、理事であって事務局長や部長といった雇用契約に基づく使用人としての地位をも兼ねる使用人兼務理事が執行している場合が多い。なお、業務執行理事および当該法人の使用人である理事を除く理事を非業務執行理事という(一般法人法115Ⅰ)。平成27(2015)年5月1日施行の改正会社法の整備法にならい、「外部理事」(改正前一般法人法113Ⅰ②ロ)を廃止して新たに設けられた概念である。業務執行理事と非業務執行理事との区分は、理事会設置一般社団・財団法人を前提としたものであり、定款に別段の定めがないかぎり各理事が業務執行権を当然に有する理事会非設置一般社団法人(一般法人法76Ⅰ)においては、両者を区分する必要はない。業務執行理事の定めは、一般社団・財団法人以外の非営利法人、たとえば、社会福祉法人(社福法45の16Ⅱ)等にも置かれている。
(豊憲一郎)