協同組合

 消費者や小生産者・中小商工業者等が自らの生活と生産の場を共同して守るために形成した経済組織体をいう。消費者生活協同組合や農業協同組合などがその典型例である。組合員が共同で所有し、民主的な管理を行うという特徴がある。現代的な協同組合の先駆としては、1844年にイギリスのロッチデールで織物工たちの手によって設立された消費組合(Rochdale Pioneers Co-operative)が代表的な位置にある。また、19世紀のドイツにおいてRaiffeisen, F.W.(ライファイゼン)の指導のもと設立された農村の小生産者や市街地の職人のための信用組合や消費組合も今日の協同組合の原型とみなせる。ロッチデールでの取り組みはロッチデール原則として後世の協同組合に受け継がれ、今日では1995年、国際協同組合同盟の100周年を記念したマンチェスター大会で定められた「協同組合のアイデンティティに関する声明」に引き継がれている。協同組合の本質をめぐっては論争があり、代表的な立場の1つが協同組合主義である。協同組合主義とは、協同組合が資本主義の原理とは異なるものとして存立し、資本主義体制によって生じる問題を克服できる存在と位置づける立場を指す。営利企業の対抗勢力として、協同組合陣営がその陣地を広げることの意義が説かれることもある。このような立場に対して、主としてマルクス主義の見地から、協同組合は商業資本の一形態にすぎないという批判がある。
 日本の法制度においては、協同組合を一般的に規定する基本法は存在せず、事業内容ごとに個別の法律で規定される。生協法、農協法、森林組合法、信金法、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)などがその例である。生協法において「営利を目的としてその事業を行ってはならない。」とされているように、協同組合は「非営利」の経済組織体と位置づけられるが、事業が黒字になった場合、「剰余金割戻し」として組合員に剰余金の一部を還元することがある。また、平成28(2016)年施行の改正農協法では、改正前の非営利目的を定める規定が削除され、従来の「組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とする。」という規定に加えて、「農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。」という規定が示された。ノンプロフィット・セクターに当てはまる要件として「利益非分配」を重視する非営利組織研究の見地のもとでは、協同組合が分析対象から除外される場合もある。ただし、協同組合では出資金に対する配当率は制限され、無制限に配当を出せる株式会社とは異なる。また、協同組合においては組合員の事業の利用分量に応じて剰余金を割り戻すという基準があり、保有株数に応じて配当を分配する株式会社とは利益分配のあり方が異なる。議決権に関しても、協同組合では出資額の多寡にかかわらず1人1票の議決権が与えられており、保有株数に応じて議決権(1単元株に対して1票の議決権)が与えられる株式会社と性質を異にする。
(橋本 理)