日本の法制度においては、協同組合を一般的に規定する基本法は存在せず、事業内容ごとに個別の法律で規定される。生協法、農協法、森林組合法、信金法、労働者協同組合法(令和2年法律第78号)などがその例である。生協法において「営利を目的としてその事業を行ってはならない。」とされているように、協同組合は「非営利」の経済組織体と位置づけられるが、事業が黒字になった場合、「剰余金割戻し」として組合員に剰余金の一部を還元することがある。また、平成28(2016)年施行の改正農協法では、改正前の非営利目的を定める規定が削除され、従来の「組合員及び会員のために最大の奉仕をすることを目的とする。」という規定に加えて、「農業所得の増大に最大限の配慮をしなければならない。」という規定が示された。ノンプロフィット・セクターに当てはまる要件として「利益非分配」を重視する非営利組織研究の見地のもとでは、協同組合が分析対象から除外される場合もある。ただし、協同組合では出資金に対する配当率は制限され、無制限に配当を出せる株式会社とは異なる。また、協同組合においては組合員の事業の利用分量に応じて剰余金を割り戻すという基準があり、保有株数に応じて配当を分配する株式会社とは利益分配のあり方が異なる。議決権に関しても、協同組合では出資額の多寡にかかわらず1人1票の議決権が与えられており、保有株数に応じて議決権(1単元株に対して1票の議決権)が与えられる株式会社と性質を異にする。
(橋本 理)