これらを踏まえ、「協働」のもつ特別な意義は以下である。第1に、デモクラシーの視点である。地域住民からなる多様な主体が、自治行政に参画し協力・連携を重ねていくことは住民自治の拡充を意味し、デモクラシーの確保に繋がっていく。第2に、効果性、効率性の視点である。共通目標達成のために、公的サービスの受け手であった地域住民自らが、能力、資源、規模など互いに異なる点を尊重し、特質や個性に応じた役割と責任を担うことで、社会的効用(価値)を効果的、効率的に生産、分配していくことが可能となる。一方、特にボランティア元年といわれる阪神・淡路大震災の平成7(1995)年以降、社会は、政策決定や公的サービス生産供給の主体が行政のみの一元的なガバメント(統治社会)から、多元的な主体によるガバナンス(協治社会)へと変容してきた。このガバナンスは「協働」を前提に、その主体として自治的市民を想定している。しかし、いまだ市民には温度差があるのが現状である。そこで、これからの地域ガバナンスは、コプロダクションとしての「協働」の意義に立ち返り、自治的市民の育成も視野に入れた地域社会のデザインを構築していくことが求められる。
(黒木誉之)