行政法

 国や地方公共団体その他行政活動を行う者(行政主体)の行政活動に関連する法律群の総称である。憲法や民法のように行政法として単独の法典が存在しているわけではない。行政主体とその構成員(国民、住民)の関係について定める公法に分類され、構成員相互間の関係について定める私法とは異なる規律をする国内法である。行政法の特質として、公益優先性と公権力性がある。公益優先性とは、行政活動がかかわる全体利益(公益社団・財団法人)を保護するために、私人活動がかかわる構成員個々の利益(私益)に優先した特別の規定を置くということであり、公権力性とは、公益保護のために構成員個々の意思に関係なく、一方的かつ強制的に権力を用いて行政活動を行い、やむをえず私益を奪う性質があることをいう。行政活動は、立法と司法作用を除くほとんどすべての国家作用を対象とすることからそもそも権力的であり、潜在的に濫用の危険を有している。行政法は、権力分立主義を前提として行政活動を立法によって制約すべく近代法治国家において発展した法体系であり、行政活動が適正に行われる根拠となる。行政活動に関連する法律は多数存在し、その対象は非常に広いことから、行政法は大きく3つの観点から分類されるのが一般的である。まず、行政主体にその存在の根拠を与え、行政主体が設置する行政機関の仕組みや任務および担当する事務範囲などについて規定する法律群を「行政組織法」と分類総称する。これにはたとえば、内閣法や国家行政組織法などがある。つぎに、行政主体が行政目的を実現するために構成員の権利または利益に対して影響を及ぼす行為を行政作用といい、この行政作用について規定する法律群を「行政作用法」と分類総称する。これにはたとえば、土地収用法や警察官職務執行法などがある。3つめに、行政活動によって不利益を受けた構成員の救済方法について規定する法律群を「行政救済法」と分類総称する。これにはたとえば、行政不服審査法や行政事件訴訟法、国家賠償法などがある。
(村山博一)