行政庁

 行政の担い手である行政主体(行政を行う権利と義務をもつ団体のこと)のうち、行政の意思を決定し、それを国民等の外部に表示する権限を有する機関のことである。つまり、国民に命令してその権利義務を決定したり、行政主体のための契約を締結するために相手方に対して意思表示をする権限をもつ行政機関のことである。具体的には、行政組織の長(特定の事務では組織の長ではないが専門知識をもった職員であることもある。)が行政庁とされ、これを中心にそれを補佐する内部部局を補助機関、行政庁の諮問に応えるものあるいは自ら行政庁に意見を具申するものは諮問機関、そのなかでも行政庁の意思を拘束する議決を行うものは参与機関と呼ばれる。行政庁は行政需要に迅速に対応し、責任の所在を明確にするために独任制行政庁がその原則である。他方で政治的中立性や専門性の確保、利害関係の調整が必要な分野においては複数の構成員から成る合議制行政庁が設置されている。また管轄する地域が全国に及ぶ中央行政庁や一部の地方に限定される地方行政庁などの区分もある。その他、1つの行政組織内において行政庁が階層的に構成される場合、上級機関の地位にあるものを上級行政庁(上級庁)と呼び、下級機関の地位にあるものを下級行政庁(下級庁)という。上級庁の指揮監督権は、下級庁の事務執行を調査したりそれらの報告を受けるなどの監視権や下級庁の事務執行を事前にチェックするための許認可権、下級庁の行政内容を指示するために訓令・通達を発する訓令権(これに基づき下級庁に対して不当な処分の取消しや停止を要求することもできる。)の形で行使される。たとえば、公益認定法はその第4条において、「公益目的事業を行う一般社団法人又は一般財団法人は、行政庁の認定を受けることができる。」と規定しており、その行政主体は公益社団・財団法人の区分に応じ内閣総理大臣または都道府県知事とされている。
(井寺美穂)