行政コスト計算書

 地方公共団体や独立行政法人等が作成する財務書類の1つであり、営利を目的としていないため、企業会計における損益計算書と異なり、業績表示のための損益計算ではなく、一会計期間の活動により生じた行政コストないしそれを直接賄うための受益者負担収益等を控除した純行政コストを明らかにすることを目的として作成されるものである。現在、地方公共団体が平成26(2014)年、総務省により公表された「統一的な基準による地方公会計マニュアル」に従って作成している行政コスト計算書において、発生主義の会計基準に基づき計上される経常費用は、歳入歳出決算に計上される歳出のうち、当期の費用にならない歳出項目を除外し、さらに歳出にはならない減価償却費や退職給付引当金繰入額等を費用として計上することにより、経常的な行政活動により生じたコストをあらわすことになる。そして、当該経常費用から、その行政活動を賄うために直接の対価として徴収された使用料・手数料、すなわち受益者負担収益といった経常収益を差し引き、さらに臨時に発生する損失と利益を加味したものが純行政コストになる。この純行政コストは、当該年度の行政活動について受益者負担収益以外の税収等により賄うべき行政コストをあらわすことになる。一方、平成30(2018)年9月に公表された独立行政法人会計基準の改定により、行政サービス実施コスト計算書が廃止され、独立行政法人が提供したサービスであるアウトプットを産み出すために使用したフルコストをあらわす行政コスト計算書が新たに導入され、損益計算書と合わせて独立行政法人の運営状況をあらわす財務諸表として位置づけられている。この「行政コスト」は、損益計算書上の費用とその他行政コストに分類され、従来の行政サービス実施コストに相当する独立行政法人の業務運営に関して国民の負担に帰せられるコスト(国や地方公共団体の資源の利用から生じる機会費用を含む。)が財務諸表の注記に表示される。
(瓦田沙季)