理事が理事会等の承認なしに競業取引を行った場合においても、当該規制の対象外となる相手方の利益を保護するため、その取引自体は有効となる。当該取引の結果、法人に損害を与えた場合には、当該理事は損害を賠償する責任を負う(同法111Ⅰ)。このとき法人が被った損害額に対する立証の負担を軽減するために、当該取引によって理事または第三者がえた利益の額をもって、法人が受けた損害額と推定するものとされる(同法111Ⅱ、198)。理事が理事会等の承認をえずに競業取引をしたことは、忠実義務違反となり、解任の正当な理由となる(同法70Ⅱ、176Ⅰ)。また、法令に違反する事実として理事解任の訴えの事由(同法284)になりうるとされる。
(内野恵美)